第29章 日常14:はじめの一歩
「あん…」
思わず声が漏れてしまって、僕は慌てて両手でお口を塞いだ。
「くくく、脇が感じるとか、俺知らなかったけど?」
「も、もぉ…、意地悪…」
唇を尖らせた僕を、鏡越しに翔くんが笑う。
不思議だよね、さっきはボンヤリとしか見えなかった翔くんのお顔が、今はハッキリと見える。
「よし、流すよ? ちゃんと目瞑っといてよ?」
「うん」
僕は言われた通りに、瞼わギューッと閉じ、両手でお顔を覆った。
シャワーが頭からかけられ、全身に纏っていた泡が流れ落ちて行く。
う〜ん、さっぱり♪
…って、浮かれてる場合じゃない!
もう人に見せることもなくなったから、僕自身でもすっかり忘れてたけど…
僕のお股の毛…まだちゃんと生え揃ってない、ってゆーか…チクチクの状態じゃん!
え、え、ちょっとヤバいって…
僕はお顔を覆っていた手を、そーっとお股へと移動させると、こっそりお股を隠した。
でも流石翔くんだよね?
絶対見逃さないんだもん。
「どうしたの? もしかして…元気になっちゃったとか?」
「ち、ち、違うもん…!」
僕は翔くんがシャワーヘッドをフックに引っ掛けたのを確認してから、バスタブに飛び込んだ。
だってこんなチクチクなお股、翔くんには見られたくないもん。
「早くしないと僕先出ちゃうからね!」
「はいはい(笑)」
本当はさ、僕だって翔くんの背中洗って上げたかったけど、そうすると見えちゃうもんね?
だから次の楽しみにとっておこう♪
それにしても…、改めて間近でじっくり見てみると、翔くんの身体って、すっごいマッチョってわけでもなく、程よく筋肉が付いてて、あの胸に抱かれることを想像したら、胸がドキドキしちゃう。
撫でた肩は…ちょっぴり残念だけど、それも含めて翔くんの身体って、本当に魅力的♡
「なに、どうした?」
「ふふ、翔くんて格好良いなぁって思ってさ(笑)」
「ははは、今頃気付いたの?」
まさかそんなわけないでしょ?
ちゃんとずっと前から気付いてたもん♪