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H・I・M・E ーactressー【気象系BL】

第29章 日常14:はじめの一歩


なんてさ、思ってたのも束の間…

上の階から聞こえてくる父ちゃんの怒鳴り声に、僕はこっそり肩を震わせた。

だって父ちゃんたら…

朝は確かに「櫻井くん」て呼んでたのに、今ではもう「翔」って呼び捨てにしちゃってるんだもん(笑)

怒られてる翔くんは…ちょっぴり可哀想だけど、二人の距離がかなり近くなってることが、僕はとっても嬉しい。

ほら、愛嬌たっぷりの僕と違って、父ちゃんは愛想も無ければ、口下手だし無口だし…、どっちかってゆーと取っ付きにくいタイプなんだもん。

だからね、そんな父ちゃんなのに、本当の親子みたく接してくれてる翔くんて、本当に凄いと思うよ。

あ、でもあれだよね?
僕とのことがあるから、翔くんも気に入られようと必死なのかもね?

ふふ、なんか面白い(笑)



お昼近くになって、母ちゃんが三人分のお弁当を運んでくれて、僕達は棟梁や他の職人さん達と一緒にお弁当を広げた。

お庭は…まだ日が照ってちょっぴり暑いけど、何だかピクニックみたいで楽しい♪

「あ、ねぇ、翔くんの方が卵焼き大きい…」

「そ、そう? あ、でも、智くんの方が唐揚げ大きくね?」

「そんなことないよ、同じだよ?」

「じゃあさ、ちゃんと人参食べれたら、卵焼き交換して上げるけど、どう?」

「え〜、そんなぁ…」

僕が甘く煮た人参嫌いなこと知ってるくせに…

翔くんの意地悪…

見た感じほぼ違いのないお弁当を突っつきながら、不毛なやり取りを続ける僕達を見て、棟梁や他の職人さん達はお腹を抱えて笑う。

でも父ちゃんはとゆーと…

半分呆れ顔のまま、無言でお弁当を突っ突き、食べ終わるとさっさとどこかへ消えてしまった。

行先は多分トラック。

父ちゃんも僕と同じで、お昼寝が大好きなんだよね♪


僕達のお手伝いが功を奏したのか、予定よりも作業が早く終わった僕達は、職人さん達に挨拶をして、工具やらをトラックの荷台に積み込んでいた。

すると棟梁がやって来て、僕に向かって茶封筒を差し出して来た。
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