第29章 日常14:はじめの一歩
「分かったよ…、我慢する…」
本当はすっご〜く見たいけどね?
でも翔くんを困らせたくないから、今はグーっと我慢することに決めた。
あ、でも…
「じゃあさ、抱っこして寝てくれる?」
「いいけど…、俺、知ってると思うけど、寝相悪いよ?」
うん、知ってる。
初めて翔くんの家にお泊まりした時も、翔くんが初めて僕のアパートにお泊まりした時も、それから和のマンションでお泊まりした時も、何度ベッドから落とされそうになったことか…
だから翔くんの寝相が恐ろしく悪いこと、僕はちゃんと知ってるよ?
でもね、それでも僕はね、
「いいの、僕翔くんになら蹴っ飛ばされても、殴られても、それでも良いから抱っこして貰いたいの」
翔くんに抱っこされて眠りたいの。
ダメ?、と強請るように見つめると、翔くんは僅かに肩を竦めてから、両手を広げた。
「おいで」って。
勿論飛び込んだよ?
翔くんの腕の中に飛び込んで、背中に腕を回して、胸にグリグリと頬を擦り付けてね♪
そしたらね、翔くんの心臓の音がドクドクッて鳴ってるのが聞こえて、
「ふふ、翔くんすっごくドキドキしてる(笑)」
上目遣いで翔くんを見上げると、翔くんがちょっぴり恥ずかしそうに視線を逸らした。
もぉ…、ちゃんと僕のこと見て欲しいのにぃ…
「も、もう…、寝ようか…」
「ふふ、うん」
僕が頷くと、翔くんはゆっくり僕を腕に抱いたまま、ベッドにゴロンと横になって…
「ねぇ、もしもね、朝起きて僕が青アザだらけだったら、翔くん責任取ってくれる?」
冗談っぽく聞いた僕の髪をサラッと指で掬うと、“うーん…”と一瞬考え込むような仕草をしてから、
「当然でしょ?」って。
でも僕は疑い深いから、それだけじゃ信じられなくて、
「本当に本当?」
翔くんの頬を両手で包んだ。
「うん、本当に本当の本当だよ」
「ふふ…、嬉しい…な…ぁ…」
あ…れ…?
翔くんの腕二抱かれてるせい…かな…、すっごく瞼が…重く…なって…きた………よ?