第29章 日常14:はじめの一歩
母ちゃんにお着替えを用意して貰って、翔くんがお風呂に向かう。
部屋に一人になった僕は、さっきまで翔くんが座っていたベッドの上にゴロンと横になった。
そしたらさ、何だか凄く眠くなって来ちゃって…
翔くんが戻って来るまで…
ちょっとだけ…ね?
襲って来る睡魔に白旗を挙げた。
うん、ちょっとだけのつもりだったんだよ?
でもさ、自分ではそんなに感じてなかったけど、よっぽど疲れてたんだろね…
けっこう深く寝入っちゃったみたいで…
「智くん?」
ポタポタと頬に冷たい物を感じて、ゆっくり瞼を持ち上げると、翔くんのちょっぴり紅潮したお顔があって…
「しょ…くん…、好き…」
大好き…、って首に腕を回した。
「俺もだよ、智くん」
「ほんと…に…?」
だったらちゃんと言って?
じゃないと僕、翔くんみたく頭良くないから、分かんないよ?
「ああ、俺も好きだよ」
「じゃあキスして?」
僕が強請ると、翔くんは“うん”と頷いてから、僕の額にキスをしてくれて、それから頬にもキスをしてくれて、唇にも…
僕はそれがとても嬉しくて、“もっと”って言いたくなるけど、ここから先は…まだダメなんだよね?
だって翔くんとの約束だもんね?
「ふふ、翔くん父ちゃんと同じ匂いがする(笑)」
まるで翔くんじゃないみたいだ。
「ああ、風呂場にあったシャンプー、アレお父さんのだったんだ?」
「うん、父ちゃんアレしか使わないから」
ってゆーか、翔くん…
「おじさんみたいだね(笑)」
「え、ああ、この服? 仕方なくね? お父さんの借りてるわけだし…」
「ふふ、でも意外と似合ってるよ?」
「そ、そう? あ、でもさぁ、下着だけは…ちょっと慣れないっつーか…」
下着って…パンツのこと?
「白いブリーフとかさ、幼稚園以来だよ(笑)」
し、白い…ブリーフ…なの?
ねぇ、翔くん…白いブリーフ穿いてるの?
「ね、見せて?」
ねぇ、ねぇ、お・ね・が・い♡