第29章 日常14:はじめの一歩
結局、僕達のアツアツっぷりに、父ちゃんも母ちゃんも、とんでもなく複雑なお顔をしてたけど、最終的には「好きにしろ」って父ちゃんも言ってくれて…
ただ母ちゃんには申し訳ないことしちゃったかなって…
母ちゃんが、僕の子供の面倒見るの、凄く楽しみにしてたのを、僕は知ってたから…。
でも母ちゃん笑ってくれたんだ、「良かったね」って…目にいっぱい涙を溜めて…
だから、自分の部屋に戻って、翔くんと二人きりになった途端に、何だか泣けて来ちゃって…
そんな僕を翔くんは、ずっと抱きしめてくれて、僕が泣き止むまで背中を摩ってくれてた。
おかげで翔くんの服は、僕の涙と翔くんの汗とでベチョベチョになっちゃって(笑)
「お風呂、入っておいでよ」
僕が言うと、翔くんはちょっぴり心配そうなお顔で僕を見つめ、そっと僕の頬を撫でた。
「一人で大丈夫?」って…
子供じゃないのにね?(笑)
「あ、でもお着替え…」
家を出る時に置いていった服だと、翔くんにはちょっと小さいし…、かと言って汗もかいてるし、このままってわけにはいかないし…
どうしよう。
あ、そうだ!
「ちょっと待ってて?」
僕は翔くんを一人お部屋に残し一階へ降りると、リビングのソファーで寝転がってテレビを見ている父ちゃんの肩を叩いた。
「ね、父ちゃんの服、翔くんに貸して上げてくれる?」
「俺の…を?」
「うん、だって僕のじゃ小さいし、父ちゃんのなら良いかなって…。あ、ついでにパンツもあったら…」
父ちゃんに比べれば、翔くんはまだ華奢な方だけど、ちんちくりんを着せるよりは、ブカブカくらいの方が楽だろうしね♪
「ねぇ、ダメぇ?」
僕が肩を揺すると、父ちゃんはさも面倒くさそうに、手だけをヒラヒラとさせて、
「あー、分かった分かった、母ちゃんに用意して貰え…」
それだけ言ってまたテレビの方に視線を向けた。
うん、これでよし♪
それにしても父ちゃん、もうちょっと愛想良くした方が良いかもよ?