第6章 scene2:ファッションホテル
散々迷った挙句、僕は淡い水色の下着を着け、その上からズボンを履いた。
前の部分にフリルがたっぷりあって、腰骨に当たる部分にはトゥルンとした生地の、ちょっと大きめのリボンが飾ってある。
男の僕が言うのも変だけど…、とっても可愛い♡
セーターの下にも、当然セットになっていたブラを着けて、その上からダウンを羽織った。
そろそろ出かけないと、集合時間に間に合わなくなっちゃう。
僕は背中にリュックを背負い、両手にメイクボックスとウイッグの入ったケースを抱え、アパートを飛び出した。
まだ夜も開けきってないからか、空気が冷たい。
息をする度に吐き出される息も、フワッと白い…ってゆーか、下着選びに時間かけ過ぎて、歯磨きするの忘れた…
流石に昨日の晩カレー食べてるし、歯磨きしないわけにはいかないよね…
仕方ない…、おにぎり買うついでにコンビニのトイレで歯磨きしよっと…
僕は急に重くなった足を引き摺るように、集合場所でもあるコンビニに向かった。
幸い…なのか、僕がアパートを出るのが遅かったのか、コンビニの前にはもうワゴン車が停まっていて…
僕は長瀬さんに一言断りを入れてから、手に持っていた荷物を後部座席に置いて、コンビニへと駆け込んだ。
勿論、手には財布と一緒に歯磨きセットをしっかり持って。
「お待たせしました…」
僕が戻るのを待ってあたかのように開いたスライドドアから車に乗り込み、早速おにぎりの包みを開ける。
歯磨きしたばっかで…って思うけど、どうせ何回もしなきゃいけないんだから、気にしない(笑)
「ねぇ、今日の男優さん誰?」
僕は決まり事のように、助手席に座る長瀬さんに問いかけた。