第6章 scene2:ファッションホテル
耳を塞ぎたくなるようなけたたましいアラーム音に起こされ、僕はベッドの上にゆっくりと身体を起こす。
一応目は覚めてるけど、頭はまだボーッとしたまま。
もし今もう一度ベッドにゴロンとしたら…、確実に寝れるレベルだ。
でもそんなわけにはいかないから、無理矢理ベッドから抜け出してバスルームに向かう。
ガッツリ寝癖のついた頭からシャワーを浴び、しっかり泡立てた柔らかめのスポンジで全身を洗いながら、脇や脛、それからVゾーンやお尻も…ムダ毛が残っていないか、鏡を見ながらチェックして行く。
やっぱさ、いくら対象が“そっち”の人達だと分かっていても、HIMEがムダ毛がボーボーだったら…
僕だったらドン引きしちゃうからね。
「大丈夫…かな…」
僕はシャワーを浴び終えた身体を、お気に入りのふわもこバスタオルで拭くと、仄かに甘く香るバニラのボディークリームを塗り込んだ。
濡れた髪をドライヤーで乾かし、着替えを済ませる…けど、ズボンを履く直前で、寝る間際に来ていた長瀬さんからのメールを思い出した。
睡魔に勝てず、結局開くことすらしなかったメールだ。
「何だったんだろ…」
僕は首を傾げながら、“HIME専用”のスマホを手に取り、メールを開いた。
えっと…、なになに…?
「えっ…、マジか…」
僕は長瀬さんから送られて来たメールの文面を見た瞬間、肩をガックリと落とした。
もう…、せっかく準備したのにな…
僕は溜息混じりに、玄関先に出かけるばっかりに用意してあったリュックを開け、底の方に押し込んであったピンク色のポーチを取り出した。
中には、通販で買った女の子用の下着が詰まっている。
僕は下着を床に何枚か並べると、元々穿いていた男の子用の下着を脱ぎ、見下ろした。
下着着けて来いってさ…、色くらい指定してくれれば良いのに…
迷っちゃうよ…