第28章 日常13:夢なら醒めないで…
“恋人”と言うべきか、それとも“お友達”って言うべきか、どうしたら良いのか迷っていると、翔くんがスッと一歩前に出て、
「櫻井翔です。智くんとはバイト先で知り合って、それから仲良くさせて貰ってます」
そう言ってペコリと頭を下げた。
「あら、そうなの? へえ〜、智にこんなお友達がいたなんて、ちょっと意外だわ」
もぉ〜、それどーゆー意味?
でも流石翔くんだよね?
もう母ちゃんに気に入られてる。
その証拠に、
「良かったら晩ご飯食べてく? あ、なんなら泊まってっても良いのよ?」
「え、良いんですか? じゃあ、お言葉に甘えて♪」
なんてさ、僕そっちのけで話が進んでる。
まあでも、“恋人”とは紹介出来なかったけど、今はこれで良かったのかな。
「あ、ねぇ、僕シャワーしてくるね?」
僕は、母ちゃんの手伝いを始めた翔くんの肩を叩いた。
すると翔くんは、手に持っていたキャベツをテーブルに置いて、僕の前髪をサラッと掻き上げ、
「うん、さっぱりしておいで?」
目尻を思いきり下げて優しく笑った。
「う、うん…」
も、もぉ…、そんな風に微笑みかけられたら、せっかく治まった筈の息子くんがドキンてしちゃうじゃんか…
「あ、母ちゃん、晩ご飯カレーが良い」
「カレー? 良いけど、せっかくお友達来てるのに?」
「うん、カレーが良いの」
母ちゃんの作るカレーは、ちょっぴり辛くて、でもたっぷり入れた野菜の甘みもしっかりあって、本当に美味しいんだ。
だから翔くんにも母ちゃんのカレーを食べて貰いたいんだ。
「分かったわ、じゃあ…今日の晩ご飯はカレーね。あ、智がお風呂行ってる間、翔くん手伝ってくれる?」
「はい、勿論♪」
母ちゃんと翔くんが並んでキッチンに立つ。
ってゆーか、翔くんお料理なんて出来ないんじゃ…
だって、「得意料理はお茶」って言っちゃうような翔くんだよ?
うーん…、何だか心配。