第28章 日常13:夢なら醒めないで…
僕は改めて翔くんのHIMEマニアっぷりに感心していた。
まあ…、蕾ちゃんや息子くんの形だけでも、“HIMEだって分かる”って豪語していた翔くんだから、当然と言えばそうなんだろうけど…
「え、で、でも、そんな前から分かってたなら、どうして言ってくれなかったの?」
そしたら僕だってこんなに悩まなくたって済んだかもしれないのに…
「それは…、自分の気持ちに確証が持てなかったから…かな」
「確証…って?」
僕が聞き返すと、翔くんは少しだけ考え込んでから、それまで窓の外に向けていた視線を、僕へと移動させた。
少しだけ頬が赤くなってるのは、僕の気のせい?
「なんつーかさ、俺はずっとHIMEちゃんのファンで、HIMEちゃんなら、ナニが着いてようと…つか、身体が男であろうと、反応はしてたし、抱けるって自信はあった」
うん、知ってるよ?
だって僕、見ちゃったもん…、翔くんがHIMEのDVDオカズにして、一人でナニしてる姿…、見ちゃったから…
だから、HIMEが相手なら…見た目が女の子ならば、大丈夫なんだって僕も思った。
「でもさ、この先HIMEちゃんではなく、智くん自信のことを好きになったとして、もし智くんと…ってなったらさ、やっぱり自信がなかったっいうかさ…。ほら、俺ってさ、こう見えて一応“女子”が好きなわけだし…」
知ってる。
翔くんのことなら、僕何でも…は大袈裟だけど、知ってる。
翔くんが童貞だってことだって、関係ないかもだけど、ちゃんと知ってるもん。
翔くんの言ってることも、ちゃんと分かる。
だからかな…、僕ちょっと嬉しかったりするんだ。
だってね、僕を好きになったとして…ってさ、それってHIMEとしての僕ではなく、智としての僕とのことを、ちゃんと真剣に考えてくれてたってことだもんね?
その上で、自信が持てない…ってことだもんね?
だったらさ、それはそれで仕方ない事だもん。
僕とのことを真剣に考えてくれただけでも、“ありがとう”って言いたいくらいだよ。