第28章 日常13:夢なら醒めないで…
俯いてしまった僕の髪に、翔くんの指が触れる。
汗と埃に塗れてるから、あんまり触られたくないのに…
でも、心のどこかではもっと触って欲しい…って願う自分もいたりして、凄く複雑な気分になる。
ってゆーか…
「ごめんね?」
「何…が…?」
「僕がHIMEだってこと隠してたりしたから、翔くんのこと困らせちゃったんだよね?」
もし、翔くんがHIMEのファンだって言った時に、僕がHIMEだってこと打ち明けてれば、翔くんを悩ませることだってなかっただろうし…
「俺、別に困ってなんかないけど? 確かに考えもしたし、迷いもしたけどさ、俺…気付いたから…」
言いながら、僕の髪に触れていた手を頬へと滑らせ、そのまま僕のお顔を包み込む。
ちょっとだけ…震えてる?
「何…を…?」
「俺さ、やっぱり今でも自信はないんだけど、智くんのこと…、その…、す、す、す…好き…っつーか…」
えっ…?
「ねぇ、それって….お友達として? それとも…」
期待しちゃいけない、って…
もし想像と違ったら、傷付くのは自分なんだ、って…
分かってるけど、どうしても期待してしまうのは、翔くんの僕を見る目がとても真剣だから…なのかもしれない。
「それは…その…なんつーな…、恋愛感情…っつーか…」
「えっ…?」
「だーっ、もぉ…、俺告白とかしたことねぇから、何て言ったら良いか全然わっかんねぇよ…」
え…、告白って…、嘘…でしょ?
翔くんが僕に告白なんて…、そんなことあるわけ…
ない…って思ってた。
でも…
えっ…、えぇっ…!?
今、一瞬だけど…、本当に本当の一瞬の出来事だったけど、翔くんの唇…、僕の唇に触れた…よね?
嘘…、夢じゃ…ないんだよね?
「あ、あの…、えと…」
「ごめん…、言葉で言うより、こっちの方が早いと思って…」
嫌だった?って翔くんが僕のお顔を覗き込む。
けど、僕はどう答えて良いのか分からなくて…
「嫌…じゃない…と思う」
寧ろ…嬉しかった…よ?