第28章 日常13:夢なら醒めないで…
え、でもちょっと待って?
あの時、確かに翔くんのベッドで一緒に寝たけど、特別なことなんて何一つしてない。
なのにどうして僕がHIMEだって分かったの?
僕が首を傾げていると、不意に伸びてきた手が僕の唇をスルッと指でなぞって、
「ここのライン…っつーか、形がさ…同じだったんだよね、HIMEちゃんとさ…」
櫻井くんがクスリと笑った。
え、それだけ…で?
唇の形が似てるってだけで、僕がHIMEだってことに気付いたってこと?
「え、で、でも、唇の形なんて、そんな皆変わんないでしょ?」
そりゃ、薄いとか厚いとか、多少は違いもあるだろうけどさ…
「勿論、それだけじゃないよ? 例えば、寝る時に半開きになる口元とか…」
え、そうなの?
僕、全然自覚なかったけど、もしそうなら今度から気を付けなきゃ…って、ちょっと待って?
「僕、寝顔なんて見せたことあったっけ?」
HIMEになってる時は、滅多に居眠りすることもないから、寝顔なんてあんまり人に見せたことない筈なんだけど…
「えっと…、前にDVDに特典映像が付いてたことあったでしょ? その中に、一瞬なんだけど、HIMEちゃんがうたた寝してる場面が写ってて、それで覚えてたんだ」
「そう…なんだ…ね…」
ってゆーか、本人の僕ですら忘れているようなことを覚えてるのは、やっぱり翔くんは生粋のHIMEオタク…ってことだよね。
「あ、あとさ、足…」
「足って…、僕の?」
「そう、足。智くんの足の筋肉の付き方と、HIMEちゃんの足の筋肉の付き方、同じだったから…」
「あ…」
そっか…、言われて見れば確かに僕の足って、特にふくらはぎとかけっこうな筋肉質で、ミニスカートを履いたりする時とか、悩みの種ではあったんだよね…
上半身は完璧な女の子なのに、足だけはどうしても男の子っぽくて、それがある意味コンプレックスでもあったんだけど、まさか足の筋肉の付き方でバレるなんて、思ってもなかったよ。