第28章 日常13:夢なら醒めないで…
僕は机の上に広げたお菓子を、摘んでは食べ、また摘んでは食べ…、たまにジュースで口を潤しながら、話し出すタイミングを探っていた…、つもりだったんだけどな…
気付いたら、大量にあった筈のお菓子は粉程度にしか残っていなくて…
「あ、ごめん…」
お客さまのお口に一つも入れることなく、しっかり完食してしまったことを詫びた。
でも翔くんは、
「く、くくくく、よっぽどお腹空いてたんだね?(笑)」
そう言ってお腹を抱えて笑った。
ってゆーか、そんなに笑わなくてもいいのにぃ…
僕が頬を膨らますと、翔くんは徐に腰を上げて、僕の目線の高さまで腰を折った。
え、なに…?
この距離感…、困るんだけど…
僕は咄嗟に瞼をギューッと閉じた。
別にキスを期待したと、そんなんじゃないよ?
たださ、どこ見て良いのか分かんなかったんだもん。
あんまり近くに翔くんのお顔があり過ぎてさ…
だってね、鼻息がかかるんだよ?
そりゃ僕の心臓だってバクバクするよ…
僕はギュッと瞼を閉じたまま、翔くんが離れて行くのを待った。
でも、どれだけ待っても翔くんとの距離は変わらなくて…
そっと瞼を持ち上げると、僕を真剣に見つめる翔くんと目が合った。
「あ、あの…」
「着いてる…」
えっ…?
「口の周り…、お菓子の粉…、いっぱい着いてる」
「え、う、嘘…」
言われて急に恥ずかしくなった僕は、慌てて口の周りを手の甲で拭った。
そしたらさ、口の周りをゴシゴシする僕の手が、翔くんの手にガシッと掴まれて…
「違うよ、そこじゃなくてここ…」
もう片方の手が僕の頬をキュッと摘んだ。
「ほらね?」
その手には、確かにお菓子の粉…ってゆーか、欠片(?)が摘まれていて、翔くんはそれを何の躊躇いもなく自分のお口に入れた。
そして一言「うっま!」って言って、ニカッと笑った。
ってゆーかさ、恋人…みたいじゃん…
僕達、全然そんなじゃないのにさ…