第28章 日常13:夢なら醒めないで…
情けないと思いつつ(いや、半分は翔くんのせいだけどね?)も、翔くんの手を借り家に入った僕は、先に二階に上がるように翔くんなな言ってから、キッチンへと向かった。
母ちゃんはパートに出てる時間だから、お茶を頼める相手がいないことを残念に思いながら、大きめのペットボトルと適当なお菓子を持って二階へ上がる。
階段を上がった先には、廊下で佇む翔くんがいて…
「ここ、僕の部屋…」
三つあるドアのうち、一番奥のドアを指差すと、僕の両手が塞がっていることに気付いた翔くんがドアを開けてくれた。
「入って?」
「お邪魔します」
「散らかっててごめんね?」
何せこっちに来てからってゆーもの、お家と現場との往復ばだかだし、何より慣れない肉体労働(ある意味AVの現場もそうだけど…)に、片付けなんてしてる余裕なかったんだもん。
それにまさか翔くんが来るなんてさ、夢にも思って…なかった訳じゃないよ?
白馬に乗った翔くんが、僕のことを…、なんて毎日夢には見てたからさ…
でもそれが(まだだけど)現実になるなんて、考えてもなかったんだもん…
もし分かってたらさ、もうちょっと綺麗にしといたのに…って、今更後悔しても遅いんだけどさ…
「適当に座って?」
テーブルなんて無いから、勉強机の上に飲み物とお菓子を置き、締め切ってあった窓を開けた。
都会とは違う、澄んだ空気がカーテンを揺らしながら部屋に流れ込み、車酔いしたせいか、息苦しさを感じて居た胸が、ほんのちょっぴりだけど、スッとしたような気がした。
僕は翔くんが床に腰を下ろしたのを確認してから、机の椅子に座った。
本当は…ね、隣に座りたかったけどさ、今は無理だから…
それにしても、何から話したら良いんだろう…
話したいことも、勿論聞きたいことだって、いっぱいあるのに、何をどう話したら良いのか、きっかけが全く見つからない。
まあ…、元々が僕って無口な方なんだけどね?