第28章 日常13:夢なら醒めないで…
背中から回された腕を、すぐに振り解こうと思った。
でも出来なかった。
だって翔くんの手…、凄く震えてるんだもん。
どうして震えてるのかは…、正直僕には分からないけど、でもそんな翔くんの手を、僕が振り解けるわけなんてなくて…
「離し…て…」
このままだと僕…
「お願いだから、離して…」
俯いたまま、背中の翔くんに訴えかける。
でも翔くんは、僕を抱く腕の力を緩めることは一向になくて…
「このままだと僕、勘違いする…」
もしかして、って…
翔くんも僕のことを、って…
勘違いしちゃうから…
そんな筈ないって、ちゃんと分かってる。
けど、こんな風に抱きしめられちゃったらさ、期待しちゃうじゃん…
期待して、裏切られて…、泣くのはもう嫌なのに…、まだ翔くんのこと忘れらんないから、期待しちゃうんだよ?
どうして分かってくれないの?
もう僕…、どうしたら良いのか分かんないよ…
頭が混乱して、息も苦しくて…、自然に流れてくる涙を拭くことも出来ずにいると、僕の肩口にフワッと…、翔くんの濡れた髪が触れた。
胸か…ドキンと高鳴る。
「あのさ…、勘違い…しても良いから…」
えっ…?
「いや、寧ろ勘違い…して欲しい…っつーか…」
え…、ちょっと意味…分かんない…よ?
「あー、クソっ…、だから、なんつーか、その…勘違いじゃないから…」
ねぇ、それって…
「翔くん、自分が何言ってるか、分かってる?」
だってそんな言い方されたら、僕…
「期待…、しても良いって…こと…?」
僕が聞くと、僕の肩で翔くんの頭がコクンと揺れた。
「それって…さ、僕のこと…」
好きなの?って聞きたいのに…
たった一言なのに、そこから先の言葉が上手く出てこなくて、僕は胸の辺りをギューギューと締め付ける翔くんの手に、自分の手を重ねた。
その手はやっぱり震えていて…
どうしてだか分かんないけど、重ねた僕の手まで震え始めた。