第27章 日常12:僕、さよなら…、だよ
まさか本当に“おかしなこと”を考えていた、なんてとても言えなくて…
僕は首をプルプルと振って誤魔化すけど、流石母ちゃんだよね…
「ったくもう…、ちゃんと人の話を最後まで聞かないから…」
畳んだ洗濯物をロッカーに仕舞いながら、深い溜息を落とした。
「まあでもアンタが来てくれて助かったわ…」
え、どゆ…こと…?
「実はね、どうしても断れない仕事が入ってて…」
そう言って母ちゃんがニヤッと笑う。
ううっ…、嫌な予感しかしないんだけど…
「暫くこっちにいられるんでしょ?」
「う、うん、まあ…」
現状仕事もしてないプー太郎さんだし、実際暇は持て余してるけど…
「え、でも無理だよ? 僕、父ちゃんの代わりなんて出来ないよ?」
父ちゃんの仕事は、部屋の壁紙なんかを貼る、所謂クロス貼りってやつなんだけど、とてもド素人の僕が“父ちゃんの代わりに来ました〜♪”なんて、気楽に出来る仕事でもない。
うん、絶対無理…
って言ったんだけどな…
結局、父ちゃんが退院するまで、って条件で母ちゃんに押し切られ…
だけどド素人の僕に出来る仕事なんて限られてるから、雑用係として、現場のイカついおっちゃん達にこき使われる羽目になり…
気付けば一週間が経とうとしていた。
その間、僕のスマホは一切鳴ることはなく…
それもその筈、僕が持って来たのは、プライベート用のスマホだけで、そこには松本さんは勿論、和の番号だって登録していないんだから、連絡の取りようがなくて…
HIME専用スマホからアドレスを移しておかなかったことを、随分経ってから後悔した。
きっと心配してるだろうな…
でも連絡が取れない以上どうすることも出来ないし…
でも明日には父ちゃんも退院してくるし、そしたら帰れるわけだから、それからでも良いか…
なんて思ってたのにさ…
想定外のことって、案外続いたりするもので…