第27章 日常12:僕、さよなら…、だよ
当然冷たくなっていると思っていた指の温かさに、僕の頭が激しく混乱する。
「え…、どゆ…こと…」
だってそんな筈…
僕はお顔をパッと上げると、父ちゃんの指をニギニギしたまま、死んだように(僕的には”死んでる”って思ってる)眠る父ちゃんのお顔を、叩いたり摘まんだり…
それでも父ちゃんはピクリともうごかなくて…
僕の気のせいだったんだ。
やっぱり父ちゃんは…
一度は引っ込んだ筈の涙が再び溢れ、父ちゃんの手にポタポタと落ちた。
「父ちゃん…、ごめんね…」
それ以外の言葉が見つからない僕は、父ちゃんの手を頬に擦りつけながら、何度も同じ言葉を繰り返した。
その時、
「あら、智じゃないの」
母ちゃんの声がして…
声がした方をゆっくり振り返ると、そこにはお洗濯かごを手にした母ちゃんが、すっごーく驚いたお顔をして立っていた。
「智、なんであんたここにい…、えっ…?」
「母ちゃん!」
僕は姉ちゃんにしたみたく、母ちゃんが言い終える前に、母ちゃんに飛びついた。
母ちゃんが手に持っていた洗濯かごは、見事に床に転がった。
「ちょ、ちょっと、何なのよ、いきなり…」
僕がいきなり飛びついたからか、戸惑いの声を上げる母ちゃんを、僕はやっぱろ姉ちゃんにしたのと同じように、ムギューッと抱き締めた。
「どうして?」
「えっ…?」
「どうして言ってくれなかったの…?」
ちゃんと言ってくれてたら、もしかしたら…
「そんな大したことなかったし、わざわざアンタに連絡する程でもないと思って…」
大したことないって…、そんな言い方…
それでも僕は知らせて欲しかった。
「酷いよ…」
いつの間にか追い越してしまった母ちゃんの肩に顔を埋めて、ワンワン泣き出した僕の背中を、母ちゃんがポンポンと叩く。
「ごめんね…、でも本当に大したことないから…」
「で、でも…」
もう父ちゃんは二度と…