第5章 日常2:彼
僕の中で…ううん、本当はもっと前からなのかもしれないけど、僕が持ってた櫻井君のイメージが、ガラガラと音を立てて崩れて行くような気がした。
あ、勿論”良い意味”で、だけどね?
だってね、チャラい見た目反して真面目だし、けっこう頑固だし、服のセンスが悪いのは…関係ないけど、可愛いけどカッコ良くて、いかにも”お坊ちゃん”って感じなのにだよ?
”そっち”の人だなんて…、複雑だけど、やっぱり嬉しい♪
これまでこっち側にいるのは、特別な人達を除いたら、自分だけだってずっと思ってたから、もし櫻井君が僕と同じ”こっち側”の人だとしたら、そりゃ嬉しくない筈がないよね(笑)
ただ、僕が”HIME”であることは、僕の口が裂けても絶対口外しないってのが、長瀬さんや事務所の社長さんとの約束でもあるから、いくら櫻井君がHIMEのファンだと言ってくれたところで、秘密にしなきゃなんだけどさ…
それにさ、もし僕と櫻井君が付き合うような関係になったとして、僕の身体を櫻井君が見たら、きっと僕がHIMEであることは簡単にバレちゃう気がするんだよね…
チ〇ビや、お臍もそうだし、ケ〇の穴から、オ〇ン〇ンの大きさまで見分けられるって言うんだからさ…
…って、僕何で櫻井君と付き合う前提で考えてんの?
大体、僕が櫻井君と付き合うなんてこと、それこそ天と地がひっくり返るようなことでも起きれば別だけど、絶対にあるわけないのに…
僕はDVDを全てケースに仕舞い終え、漸く空いた両手で自分の両頬をピシャンと叩いた。
櫻井君はそんな僕を見て首を傾げていたけど、僕は気にすることなく18禁コーナーから先に出ると、丁度混み合う時間帯だったのか、数人の客が列を作るレジに入った。