第5章 日常2:彼
「興奮するかしないか…って言ったら…」
逆さまになってることに気付いたのか、櫻井君が一本一本DVDの向きを変えながらポツリ言う。
それも、耳を澄ませないと聞こえないくらいの、ちっちゃな声で、
「俺は“する”かな…」と…
「そ、そう…なんだ…? へえ…」
僕は再び手から滑り落ちそうになるDVDの山を抱え直し、必死に平静を装った。
「それってさ、HIMEちゃん(←自分で言っててかなり恥ずかしい…)にも興奮する、ってこと…?」
僕の問いかけに、コクリと頷く櫻井君。
マジ…か…
「で、でも、これって男の子同士なんでしょ? なのに興奮しちゃうの?」
「変…かな?」
いやぁ…、変じゃないけどさ…
なんなら僕だって“そっち”の人だし、何を隠そう櫻井君がファンだと言ってる“HIME”の正体はこの“僕”なんだし…
だから別に櫻井君が“そっち系”のDVDを見て興奮してたとしても、僕がそれを咎めることも、ましてや櫻井君を色眼鏡で見ることも出来やしない。
「櫻井君はさ…、HIMEのどこが好きなの? ほ、ほら、前に好みだって言ってたじゃん? でもそれって外見だけのことでしょ?」
「ああ…、うん、確かに外見は超好みなんだけとさ、なんつーか…」
なんつーか…、何?
僕の喉がゴクリと鳴る。
「何が良いか…とか、良く分かんないんだけどさ、HIMEちゃんのことなら、顔を見なくても分かるっつーか…」
は?
それってどうゆー意味?
「ツンと勃ったち○びとかさ、形の良い臍とか、それから…、キュッと萎んだケ〇の穴もそうだし、可愛い顔には不釣り合いなくらいにデカいオ○ン○ンとかさ…、顔見なくても分かる自信あるんだよな、俺…」
「そ、そ、そ、そう…なんだ…」
だ、だめだ…、僕目眩がして来た…