第27章 日常12:僕、さよなら…、だよ
ってゆーかぁ…
「ねぇ、どうして起こしてくれなかったんですか…」
見ればそこは実家のすぐ目の前て…
なのに僕を起こすこともせず、アイマスクまでしっかり着けて眠っていた松本さんに、ちょっぴりイラッとする。
だって、普段はのんびりおっとりが取り柄としているこの僕が、とーっても急いでたこと知ってるのに…
でも松本さんは一言も答えてくれず、外したアイマスクを手に握り締めたまま、真っ直ぐ前を見据えている。
まさか…とは思うけど、松本さんて、寝起きめっちゃ悪い人?
「起きたか」って言ったきり、何一つ言葉を発しないし、なんならピクリとも動かない。
やっぱりそう…だよね…
「あ、あの、こんな時間まで付き合わてしまってごめんなさい。僕、行きますね?」
僕はまだボーッとしている松本さんにお礼を言うと、シートベルトを外し、助手席のドアを開けた。
すると、
「待て…」
車から降りようとした僕の腕を、正面を向いたままの松本さんが掴んだ。
「え、で、でも…」
僕、急いでるんですけど…
「留守だった…」
へ?
「着いてすぐお前を起こしたが、つねっても叩いても、何しても起きる気配がなかったから、仕方なくインタホーンを押してみた」
「そ、そうだったんです…か?」
ってゆーか、いくら起きなかったからって、つねって叩いて…ってさ、起こし方酷くない?
もう少し優しく起こしてくれたら、僕だってちゃんと起きたかもなのに…
「誰も出ませんでした?」
「ああ…、時間も時間だったから、寝てるのかとも思ったが、何度鳴らしても反応はなかったし、玄関にもしっかり鍵がかかってた」
おかしいな…
母ちゃんはいつも、例え何時になっても、僕が帰るまでは起きて待っててくれた。
だからそんな母ちゃんが、僕が来ると分かっているのに、先に寝てるなんてありえないし、玄関の鍵をかけることだって絶対にしない筈なのに?