第27章 日常12:僕、さよなら…、だよ
松本さんの話は難しくて…
頭の中でグルグル考えているうちに、だんだん瞼が重くなって来ちゃって…
「眠いか?」
「う…ん、ちょっと…」
運転して貰ってるんだから、我慢しなきゃって思うんだけど…
そりゃそうだよね…、いつもなら僕、この時間はしっかり夢の中だもん。
「まだ時間かかるから、少し寝とけ」
「でも…」
「いいから寝とけ。何があったか知らないけど、着いてからもゆっくりは出来ないんだろ?」
言いかけた僕の言葉を遮るように、車を路肩に停めた松本さんは、後部シートからジャットを取ると、それを僕の肩にかけた。
あ…、松本さんの匂いがする。
ちょっぴり香水の匂いがキツいような気がするけど、嫌いじゃない匂いだ。
「じゃ…、ちょっとだけ…」
母ちゃんとの電話は途中で切っちゃったし、父ちゃんの身に何があったのかは分かんないけど、松本さんが言うように、数年ぶりに実家に帰ったとして、ゆっくり出来るなんて保証はどこにもないもん。
松本さんには申し訳ないけど、ここは甘えちゃっても良いよね?
僕はシートに深く身を沈めると、ゆっくり瞼を閉じた。
すると、元々睡魔には弱い僕は、あっという間に眠りの世界に落ちて行った。
実家に着いたのは、すっかり夜が明けた頃で…
朝日の眩しさに瞼を持ち上げた僕は、運転席で両腕をしっかり組んで眠る松本さんを見て、思わず吹き出してしまった。
だってさ、普通サングラスの上からアイマスクなんてする?
笑うに決まってんじゃん(笑)
僕が一人クスクス笑っていると、松本さんが微かに身動ぎをしてから、サングラスの上からかけたアイマスクをずらした。
「起きたか…」
「はい、あの…おはようございま…す」
別に松本さんとの間に特別な感情があるわけじゃない。
けど、ちょっとだけ胸がドキドキしちゃうのは、寝起きの松本さんがやけに可愛く見えた…からなのかもね♡