第27章 日常12:僕、さよなら…、だよ
返す言葉も見つからず、黙ってしまった僕の額を、松本さんがピンと指で弾く。
ちょっと痛い…
「まあ、お前達二人のことだし、二人の間に何かあったとしても、俺がとやかく口を挟むことでは無いが、俺は無理に忘れる必要はないと思うけどな…」
え…?
それって、どーゆー意味?
「思い出に変えたいって言うならそれでも良いし、寧ろお前が言うように、いつまでも引き摺ってたら…ってのも分からなくもない。でもそれって寂し過ぎないか?」
寂しいよ?
寂しいし、それにまだ過去にもなってないのに、無理矢理過去にするのは、凄く辛いよ?
でもさ、じゃあどうしたら良いの?
「俺は…さ、引き摺ったままでも良いと思うんだよな…」
「どーゆこと? 翔くんのこと、忘れなくて良いってこと?」
だって、それって結局前にも後ろにも行けずに、その場にずっと立ち止まっちゃうことにはならないの?
叶いもしない想いをずっと抱いてるなんて、それこそ悲しくなるだけじゃん…
「翔のこと…って言うよりか、翔を好きだった気持ち…って言ったら良いのかな…。それは別に持ってたって良いんじゃないか?」
翔くんを好きだった…気持ち…?
今も、僕のこの胸に燻り続けている、翔くんへの想いわを、忘れなくても良いってこと?
でもそんなこと…
「この先、もしお前に好きな人が出来たとして、その時、本当の意味で“思い出”に変わるんじゃないのか?」
「翔くんより好きな人が…、僕に…?」
本当にそんな日が来るんだろうか…
だって、翔くんを忘れようとすればする程、僕の翔くんへの想いはどんどん強く、大きくなっていってるってゆーのに?
「なんか…、僕には難しくて良く分かんないや…」
「だろうな。まともに恋愛したこともないようなガキンチョには、分かんねぇだろうな(笑)」
えっ…!
どうして…?
翔くんが僕の、本当の意味での“初恋”だってこと、どうして分かったの?