第5章 日常2:彼
大体さ、僕のDVDなんて借りてどうするつもりなの?
…って、アダルトビデオの利用目的なんて、深く考えるまでもなく“一つ”なんだろうけど、櫻井君に限って…ねえ?
と思いつつ、
「あの…さ、僕は経験ないんだけど…さ、アダルトとか借りて、何するの?」
恐る恐る聞いてみる。
すると櫻井君は顔を…ううん、顔だけじゃない、耳や首まで真っ赤にして、僕から視線を逸らした。
えっ、ちょっと待って、何その反応…
僕、聞いちゃいけないこと聞いた?
「ねぇ、それ真剣に聞いてる?」
「う、うん…」
だって本当に分かんないんだもん。
そりゃさ、僕だって友達に誘われたりして、アダルトビデオくらい見たことくらいあるよ?
でもさ、僕は元々女の子には全く興味が持てないし、それを見たからって、僕の身体に何が起きるわけでもなかったし…
尤も、その時に見せられたのが、所謂“ホモモノ”とかだったら…もしかしたらもしかして…、なんだけどね?
しかも、いくら偏見がないと言ったって、櫻井君が頻繁に借りてるのって、僕…ってゆーか“HIME”のじゃん?
ひょっとして、櫻井君て“そっち”の人なのかな…、なんて思ったり思わなかったりで…
そんなだから、本当に良く分かんなくて…
「やっぱさ、その…興奮しちゃったりすんの?」
処理済みのDVDを半分ずつ抱え、ショッキングピンクの縁取りに、蛍光イエローの文字でデカデカと“18禁”と書かれた暖簾を潜りながら、相変わらず茹でダコ状態の櫻井君に聞いてみるけど、櫻井君からの返事はなく…
黙々とDVDをケースに戻している。
でも…
櫻井君、明らかに動揺してるよね?
だってね、せっかく仕舞ったDVDだけど、全部逆さまになってるんだもん(笑)