第27章 日常12:僕、さよなら…、だよ
新しい部屋への荷物の搬入と、家電の設置を済ませ、僕達はマンションから程近いラーメン屋へと繰り出した。
松本さんのお誕生日も兼ねているから、本当はもっとちゃんとした所…って言っても、ファミレス的な所だけど、ゆっくり出来るお店の方が良いんじゃないかと思ったんだけど…
「引っ越しと言えば“そば”だ」
って松本さんが言うから、近所にお蕎麦屋さんがないか調べてみるはみたけど、結局なくて…
仕方なく“中華そば”の看板のかかったお店になった、ってわけ。
松本さん曰く、
「中華だろうがなんだろうが、“そば”には違わない」
ってことらしい。
松本さんて、派手なお顔をに似合わず、考え方とか古風なんだね(笑)
ま、ラーメン屋さんならお財布にも優しそうだし、僕的には大歓迎なんだけどね♪
四人でカウンターに並んで座り、運転があるからお酒は諦めて、炭酸の効いたジュースで乾杯をする。
あ、松本さんだけは断固として“水”だけどね(笑)
音頭は相葉さんが取った。
でもさ、相葉さんたらあれだけ言ったのに、肝心なことすっかり忘れてて…
「あ、あの、お誕生日おめでとう…ございます」
僕が言うと、相葉さんも慌てた様子でまたグラスを差し出して来てさ…
んで、一方的にグラスをカチンと鳴らして、ジュースを一気飲みするから、それには僕も吹き出すしかなくて(笑)
勿論、松本さんも「ありがとう」と言いながらも、そのお顔は笑いを堪えるのに必死そうで…
「松本さんも笑ったりするんですね」
隣で肩を揺らす松本さんを覗き込むと、松本さんは急にお顔を引き締め、
「当たり前だ。俺だって笑う時は笑う」
熱々のラーメンを箸で掬った。
「あ、美味…」
「え、ほんと?」
「ああ、いくらでも食える味だ」
食に拘りのある松本さんが褒めるなんて、よっぽど美味しいんだ…?
僕は箸とレンゲを手に取り、ラーメンを掬った。
そしていよいよ僕のお口にラーメンが、ってところで松本さんが僕の手を止めた。