第27章 日常12:僕、さよなら…、だよ
別にさ、僕の方から”手伝ってくれ”って頼んだわけじゃないから、僕が謝る必要もないとは思うんだけど、やっぱり誕生日だと聞いてしまうと、申し訳ない気持ちになる。
でも当の松本さんは、汗で乱れた前髪を軍手を嵌めた手で掻き上げると、
「どうせ暇だったし、丁度運動したいとも思っていたから、全然かまわないよ」
そう言って彫刻のようなお顔をクシャッと綻ばせた。
ってゆーか、引っ越しが運動って…、やっぱり松本さんて不思議な人だ(笑)
「あ、そうだ…。じゃあ、手伝って貰ったお礼と、お誕生日のお祝いも兼ねて、晩ご飯皆で一緒にしません?」
うん、僕にしては名案かも♪
って思ったのも束の間…
「それいいかも。勿論、智の奢りなんでしょ?」
和がキラーンと目を輝かせるから、僕は固まるしかなくて…
確かに誘ったよ?
でもそれは松本さんがお誕生日だからであって、和は違うじゃん?
それに和に奢るってことは、イコール相葉さんにも奢るってことになるわけで…
相葉さんと言ったら、ハンバーガー五個食べても平気なお顔してるくらい、痩せの大食いで有名なのに、そんな人にまで奢ってたら、凄い出費じゃん?
ただでさえ新しいマンション(←今度はアパートじゃなくてマンションなの♪)の契約費用だってけっこうかかっちゃったし…
でも…、そうだよね…
本当なら業者に頼むところ、相葉さんの声掛けもあって和や松本さんもお手伝いに来てくれたわけだし…
実際、その分の費用は浮いたしね?
だからお礼…って程でもないけど、仕方ないか…
それに和や相葉さんには、これまでお仕事でもプライベートでも、沢山お世話になってるもんね?
あ、勿論、これからだってそのつもりだけどさ、これでも感謝はしてるんだ。
和や相葉さんがいなかったら、今頃僕はあの世に…ってことはないだろうけど、きっと未だに立ち直れずにいただろうから…
「もう…、仕方ないなぁ…。でもあんまり高い所は無理だからね?」
奢ると決めたものの、財布の紐だけはしっかり締めておかないとね?(笑)