第26章 日常11:さよなら…言わなきゃだめ?
「一人…って?」
何となく…だけど、二人が誰のことを言ってるのかは、僕にも想像出来る。
だって、あの日あの場所にいた人の中で、翔くんと深い関わりのある人って、“あの人”しかいないもん。
「やっぱり松本…さん?」
僕が言うと、二人はまるでタイミングを合わせたかのように同時に頷いた。
「そうだよね…、やっぱり…」
内心、和から知らないと言う言葉を聞く前は、ひょっとして…ってことも、ほんのちょっぴりだけど頭の片隅にはあった。
以前に撮影がどうとか、二人で話してたこともあったみたいだし…
でも和が僕に黙ってそんなことするわけないし、って…
そうなると、必然的に松本さんの存在が浮かび上がって来たんだけど、やっぱりか…
「どうする? 本人に直接確かめてみる?」
相葉さんがスマホを手に言う。
多分…ってゆーか、確かめるまでもなく“絶対”松本さんであることは間違いないんだけど…
「一応さ、確認しといたら?」
和が言うから、僕も黙って頷いた。
うん、と小さく頷いてから、相葉さんの指がスマホの画面上を滑り始める。
そして、
「送信!」
相葉さんの指がスマホの画面を勢い良く叩く。
ってゆーか、そんなことしたら壊れちゃうよ?
相葉さんてば、ただでさえ力加減出来ないんだから…
それから暫くの間、僕達はテーブルの上に置かれた相葉さんのスマホを、ただ無言でジーッと見つめ続けた。
そして、スマホがピコーンと鳴った瞬間、
「来たっ!」
思いがけず僕達三人の声が揃った。
「開く…よ?」
相葉さんの、やけに神妙な口調と声に、
「う、うん…」
僕と和が頷いたのを確認して、相葉さんが松本さんからのメッセージを開く。
きっと緊張…してたのかな…
その時、誰のか分かんないけど、ゴクッて息を飲む音が聞こえた。
あ、僕じゃないから、和か相葉さんのどっちか…なんだけどね?