第26章 日常11:さよなら…言わなきゃだめ?
丁度お昼を少し過ぎた頃だったから、お昼ご飯代わりに社長さんから貰ったハンバーガーを三人でパクついた。
でもさ、いくら三人って言っても、僕と和はお互い少食な方だから、二個が限度で…
痩せの大食いで有名(?)な相葉さんだって、四つ目を完食した時点で根を上げてしまった。
でも袋の中にはまだ十個以上は残っていて…
「ねぇ、晩ご飯にどう?」
一応提案してみたけど、呆気なく却下された。
「捨てるのも勿体ないし、冷凍でもしといたら?」
「冷凍…したら大丈夫かな?」
「さあ…、やったことないから保証は出来ないけど、チンすれば大丈夫なんじゃない?」
「うん、そだね…」
ちょっぴり不安だけど、そのまま捨てるよりかは、うんとマシか…
「しかし、智んとこの社長さんて面白いね? 普通、餞別にハンバーガー持たせる? しかもこんな大量に」
うん、確かに面白い人だし、変わった人だと思う。
でもあの社長さんと長瀬さんがいたから、僕はHIMEとしてお仕事を続けてこれたのかもしれない。
そう考えると、二人には感謝しかないんだけどね?
「で? その後“彼”とは?」
和の言う“彼”が、誰のことをさしているのか、すぐに分かった僕は、苦笑いを浮かべて首を横に振った。
「え、全く?」
「…うん」
「バイトは? 行ってるんだよね?」
「バイトは辞めたって…」
「マジで? いつ?」
「んと…、あれからすぐ…だったみたい」
矢継ぎ早な和の質問に、僕は一つ一つ考えながら答えるけど、翔くんのことを考えてしまうと、どうしても言葉が続かない。
そんな僕を見かねてか、
「あのさ、智のこと心配なのは分かるけどさ、そんなに次から次へ聞いたって、智も答えらんないでしょ?」
相葉さんが和にストップをかけた。
普段ボーッとしてて、何も考えてないように見える相葉さんだけど、こうゆー時って凄く気が回るってゆーか…
慌てんほうなとこもいっぱいあるけど、案外冷静なとこもあるんだと思う。