第26章 日常11:さよなら…言わなきゃだめ?
両手に下げた袋は思った以上に重くて…
しっかりエレベーターを使った筈なのに、和の部屋がある階に着いた頃にはすっかり疲れ果ててしまった僕は、改めて残った時のことを考え、ガックリと肩を落とした。
正確に幾つ入ってるとか数えたわけじゃないけど、持った感じはけっこうな数が入ってそうなんだもん。
こんなことなら、五つとかケチくさいこと言ってないで、もっと長瀬さんに持って行って貰えば良かった。
僕は後悔しつつも、和の部屋のインターホンを鳴らすと、
「入っておいで」
すぐに相葉さんの声が返って来た。
知ってるよ?
ちゃんと鍵開けて待っててくれてること、ちゃんと分かってるんだけどさ…
なにせ両手が塞がっちゃってて、とてもドアが開けられそうもないんだもん。
「あの…、開けて貰えますか?」
僕が言うと、相葉さんは「ちょっと待ってて」とだけ言って、インターホンを切った。
「どうぞ…って、凄い荷物だね?」
ドアを開けるなり、相葉さんは僕の手を両手に下がった袋を見て目を丸くした。
「とりあえず中入って?」
僕の手から袋を一つ取り上げ、僕の背中を押した。
「お邪魔します」
袋が一つ減ったことで、随分身体が軽くなったように感じる。
僕は迷うことなくリビングへと向かうと、ちょびっとだけドアを開けて、中の様子を伺った。
トラウマ…ってわけじゃないけど、この間はドアを開けたら和怒ってたし…
勿論、あの時どうして怒ってたのか、理由は後になって分かったんだけどね?
でもやっぱり気は使っちゃう…かな。
「どうかした? 入らないの?」
背後から相葉さんに声をかけられて、僕は咄嗟に首を横に振った。
「ううん、なんでもないです」
「そ? じゃあ、入って?」
僕がちょびっとだけ開けたドアを開け放ち、相葉さんがまた僕の背中を押した。
すると、ソファに座ってゲームをしていたらしい和が僕を振り返り、
「元気そうじゃん(笑)」
と、ニヤリと笑った。