第26章 日常11:さよなら…言わなきゃだめ?
僕は思わず長瀬さんに戸惑いの表情を向けた。
でも長瀬さんは特に何も言うこともなく、ただ無言で首を縦に振った。
だから、内心本当に貰っちゃって良いのか迷いもしたけど、
「ありがとう…ございます…」
社長さんに頭を下げた。
すると社長さんは、
「ユーは、とても頑張ってくれたからね、少ないけど…ソーリーね?」
封筒を握った僕の手ごと握って、やっぱりサングラスの向こうに見える目を細めた。
「それから、この間のギャラはいつも通り、ユーの口座に振り込んでおくから」
「はい、お願いします」
「あとは…、難しいことは僕よりも智也に聞いてくれるかな?」
そこまで言って、“これで良い?”と長瀬さんに確認をする社長さん。
相変わらず大事なことは人任せなんだから…
ま、僕的にも社長さんから話を聞くよりも、要点しか言わないけど、長瀬さんから聞いた方がわかり易いし、良いんだけどね?(笑)
「ああ、ちょっと待って、これをね、ユーにと思って…」
再度お礼を言って、席を立とうとした僕を、社長さんが引き止める。
まだ何かあるんだろうかと首を傾げた僕の目の前に、テーブルの上に置かれていた袋が二つ…、差し出された。
「え、あの、これ…は…?」
まさかとは思うけと…、そんな筈ないよね?
嫌な予感しかしないんですけど?
「前にユーと一緒にランチした時、ユーここのバーガー美味しいって言ってたでしょ?」
うん、確かに言ったよ?
本当に美味しかったから。
でも…だよ?
「だからこれ、ユーに僕からのプレゼントね」
「え、あ、あの…、ええっ…?」
プレゼントは嬉しい。
でもさ、これとても一人で食べ切れる量じゃない…よね?
え、困るんだけど…
助けを求めるように長瀬さんに目を向けると、長瀬さんは口元をヒクヒクさせてて…
今にも吹き出しそうになるのを堪えているようにも見えた。
ってゆーか、笑い事じゃないんだってばぁ…