第25章 scene5:チャペル
このお仕事を始めてから、これまで何度だって繰り返してきた行為。
その相手だって一人や二人じゃない、何十人もの男優さんと…
だから匂いには…ううん、匂いだけじゃない、その味にだって慣れているつもりだった。
なのにどうして?
今はその慣れた行為が嫌で嫌で…、気持ち悪くてたまらない。
にも拘らず強制的に開かれた唇に、男の先端が押し付けられ…
上下の歯をきつく食いしばってみるけど、そんなの全然無駄で…
「口開けろ」
男の塊が僕の口の中に強引に捻じ込まれた。
「うぐっ…、んっ…」
「歯、立てんじゃねぇぞ?」
後頭部を掴まれたまま、僕の意思なんて関係なく首が前後に房ぶられる。
その度に、僕の口」を出挿りする塊の尖端が、喉の奥に当たって…
「ぐっ…、ぅっ…」
僕は吐き気を堪えるだけで必死だった。
それだけじゃない。
僕の身体に触れる無数の手が、唇が、舌が…、全てが気持ち悪くて、おぞましくて…
なのに身体は正直で、敏感な部分に与えられる刺激に、いとも簡単に反応を始めてしまう。
初めてかもしれない、自分自身の身体をここまで嫌悪するのは…
僕、一体どうしちゃったんだろう…
以前なら何とも思わなかったのに、今は人に触れられることも、触れられたことで反応してしまう僕の身体も、全部が嫌。
お仕事なんだ、って…
自分で選んで、自分で決めたことなんだ、って…
だからちゃんとしなきゃ、って…
頭ではちゃんと分かってた筈なのに、今はこの状況から早く逃げ出したくて、解放して欲しくて堪らない。
後悔はしないって言ったけど、今は前言撤回したいよ…
でも、それでもカメラはずっと回り続け、男達の体液やら、汗やら、それから閉じることの叶わない口元から流れる唾液で濡れた僕のお顔を、これでもかってくらい間近で収めて行く。
お顔だけじゃない。
僕の意思に反してどんどん固く張り詰めて行く僕の息子くんにも、容赦なくカメラが向けられた。