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H・I・M・E ーactressー【気象系BL】

第25章 scene5:チャペル


お互いに永遠の愛を誓い合って、リングを交換して…

僕の目の前を覆っていたベールが、ゆっくりと持ち上げられる。

「誓いのキスを…」

言われて僕はそっと瞼を閉じた。

すると、相葉さんの手が僕の両肩に添えられ、ゆっくりと相葉さんが距離を縮めて来るのが分かった。

そしていよいよ、僕達の唇が触れようとした瞬間、ついさっき僕が通ったばかりの扉が勢い良く開け放たれ…

「えっ…?」

ナイフを手にしたNINOが、ピンヒールの踵を響き渡らせながら、大股で僕達の元へと歩み寄って来た。

そのお顔はまるで、そう…鬼のようで…

僕は演技でもなんでもなく、相葉さんの腕にしがみつき、背中に隠れた。

だって、僕の知ってるNINOと全然違っていて、本当に怖かったんだもん…

「き、君は一体…」

相葉さんの声も、恐らくお芝居なんだろうけど、心做しか震えているように聞こえる。

「ふん、わざとらしいこと…。この裏切り者…」

NINOの氷のように冷えた視線が、相葉さんを真っ直ぐに見据える。

その姿を、僕は相葉さんの背中に隠れて覗き見ながら、

「ね、ねぇ、裏切り者って…、どーゆーことなの? 説明して?」

台本にあった通りのセリフを口にした。

「そ、それは…」

口篭る相葉さんの顎先に、ナイフの尖端が突き付けられる。

偽物だと分かっていても、その光景がとても恐ろしくて…

僕は相葉さんの真っ白なタキシードを、両手でキツく握りしめた。

「くくく、言えないわよね…。じゃあ、私が代わりに言って上げる」

「や、やめろ…、話なら後でゆっくり…」

「この人はね、あんたと結婚するために、私を捨てたの。それも一番残酷な方法でね?」

言いかけた相葉さんの言葉を遮り、NINOの冷たい指が僕の頬を撫でる。

「ど…ゆーこと…?」

「知りたい?」

知りたい…
でも知るのが怖い…

怖くて怖くて…、全身が震えた。
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