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H・I・M・E ーactressー【気象系BL】

第25章 scene5:チャペル


一瞬…

ベール越しに見えた真っ白なタキシードを着て祭壇の前に立つ人が、本当に一瞬…なんだけどね…

そんな筈ないのに…、絶対にある筈ないのに、翔くんの姿に見えちゃって…

ビスチェに締め付けられているのとはまた別の、息苦しさみたいなのを感じて、

余計なこと考えちゃ駄目なのに…
集中しなきゃいけないのに…

僕は自分に言い聞かせるように、それまで城島さんの腕に絡めていた腕を解き、差し出された手を取った。

その時、ほんの僅かだけど、相葉さんの唇が動いたような気がして…

何て言ってるのかは、ベールのせいもあって完璧には読み取れなかったんだけど、「綺麗だ」って言ってくれたのだけは分かった。

そして、いつもよりもうーんと、優しい笑顔だってことも。

だからかな…、僕のお顔にも、自然と笑顔が浮かんでる気がする。

「足元気をつけて?」

耳元で囁かれて、コクリと頷くだけの返事を返した僕は、相葉さんに手を引かれ、一段高い場所へと足を進めた。

城島さんと同じく、コストカットのために、神父様役に扮したスタッフさんが、聖書に似せた分厚い本を開き、たどたどしい口調でそこに書かれたセリフを読み上げる。

慣れてないから仕方ないんだけど、口調も動作も…全部が挙動不審で…(笑)

僕と相葉さんは、こっそりお顔を見合わせて笑った。

その間もカメラはずっと回っていて…

きっと、お顔を見合わせて笑い合う僕達は、幸せそうに微笑み合ってるように写ってるんだろうな…

ま、それも満更嘘でもないんだけどね?

だって本当に幸せなんだもん。

お芝居だって分かってるし、相手は“お姉ちゃん”の恋人だってことも、ちゃんと分かってるんだよ?

本当に好きな人と、こんな風に…って思うよ?

でもさ、現実では絶対に叶えられない夢だから…

仮に僕と翔くんが結ばれたとしても、きっとこんな風に結婚式なんて出来ないだろうから…

だから今は…、今だけは、この幸せな時間に浸っていたかったのに…
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