第25章 scene5:チャペル
指示されるまま立ち位置に立ち、監督始めスタッフさんに誘導されるまま、大体の動きを把握して行く。
…って言っても、本格的なドラマや映画みたく、キッチリ細かく…ってことはなく、至って簡単な作業なんだけどね?
ってゆーか、まさか城島さんに手を引かれてバージンロードを歩くことになるなんて…、思ってもなかったけど…
どうやら適当な俳優さんが見当たらなかったらしいんだけど、実際にはコストの削減が目的…らしいんだけど、「まさか」だよね(笑)
だって、僕よりは確かに年も上だし、“お父さん”に見えなくもないけど、親子程…ってわけじゃないんだもん。
失礼じゃない?
まあでも、
「ああ、えっと足はどっちから出せば…」
城島さんもノリノリみたいだし、僕が気にすることでもないの…かな。
ちょっぴり不安ではあるけどね?
一通りカメリハまで終え、本番に入る前に斗子さんが僕のメイクを直してくれる。
「緊張してる?」
「少し…」
本当は、今すぐここから逃げ出しちゃいたいくらあた、すっごく緊張してる。
沢山お仕事して来たけど、こんなに緊張したのは、もしかしたら初めてのことかもしれない。
「ねぇ、HIMEちゃん? ちょっと目を瞑ってみて?」
「えと…、こう?」
僕は斗子さんに言われるまま瞼を閉じた。
「そう、そのままゆっくり深呼吸をしてみて?」
「うん…」
言われた通りに、深く息を吸い込み、一息に吐き出して…
それを何度か繰り返して行くうちに、それまで感じていた張り詰めるような緊張感が、少しづつ解れて行って…
「どう? 少しは楽になった?」
瞼を開け、斗子さんの笑顔を見た僕は、フッと軽くなった気持ちのまま、斗子さんの首に両腕を回し、
「ありがとう、斗子さん。僕、頑張るよ…」
頬にチュッと音を立ててキスをした。
ふふ、こんなの長瀬さんが見たら、きっとすっごい勢いで怒るんだろうけど、見てないから良いよ…ね?(笑)