第25章 scene5:チャペル
NINOに手を引かれ、チャペル内へと戻った僕は、改めて近藤監督にご挨拶をして、近藤監督がNINO達に段取りの説明をしている時間を使って、長瀬さんの持っていた台本に目を通した。
さっきは適当に返事をしちゃったけど、やっぱり嘘つくのは良くないことだもんね?
「ここに座って?」
斗子さんが持って来てくれた椅子に座り、台本をパラパラッと捲る。
けど、相変わらず僕のセリフは殆ど無くて…
あるのは冒頭の部分、新郎役の相葉さんと永遠の愛を誓い合うシーンだけだ。
当然…って言えば当然なんだけどね?
それにしても新郎役が相葉さんて…、あ、だから真っ白なタキシード着てるんだ?
んで、その相葉さんの浮気相手がNINOか…
まるでお葬式に着るみたいな、真っ黒なドレスを着てるから、“訳あり”な役だとは思ったけど、そーゆーことか…
それにしても、現実的には二人は恋人同士だし、実際こんなこと有り得ないんだろうけど…、なんだか変な感じ…
しかも松本さんの役ったら、新婦である僕の“元”恋人で、刑務所から出所したてな“訳あり”な役だし…
でもって僕は浮気相手と“元”恋人の恨みを買って…って、これじゃまるで昼ドラもビックリの泥沼劇じゃん…
自分で選んだこととは言え、ちょっと気が重くなってきたよ、僕。
ダメダメ…、僕だけがこんな気持ちってわけじゃないだろうし、それに私情は抜きってNINOだって言ってたじゃん。
それでも…
「はあ…」
溜息って勝手に出ちゃうんだよね…、困ったもんだ。
台本をパタンと閉じ、僕は祭壇に飾られたマリア像を見上げた。
こんな神聖な場所なのに、僕ってばこれから、あんなことやこんなこといーっぱいされて、挙句に…
僕ってば、なんて罰当たりなんだろ…
二度目の溜息を漏らしかけた丁度その時、
「カメリハ始めます」
チャペル内に、若い男性スタッフさんの声が響いた。