第25章 scene5:チャペル
斗子さんの指は、やっぱり“元”男の人だっただけあって、とっても男っぽくて、節とかもけっこう太かったりするんだけど、でも僕は斗子さんの指にお顔を触られるのが嫌いじゃない。
だってね、軽くマッサージをしながら触れる指が、すごく優しいんだもん。
色んな人にメイクして貰ったし、勿論自分でもしたりするけど、斗子さんにして貰うのが一番気持ち良いかもしんない。
「HIMEちゃん、この間よりも随分肌ツヤが良くなったわね」
「そう…ですか?」
「お肌って正直だから、睡眠不足は勿論なんだけど、ストレスとか抱えてるとけっこう荒れちゃったりするんだけど…、今のHIMEちゃんのお肌、とっても綺麗だわ」
ふふ、斗子さんに褒められちゃった♪
嬉しいな♡
でも、きっと和と相葉さんのおかげ…だよね?
ずっと溜まってたモノを、ぜーんぶ吐き出させてくれたもん。
だから僕のお肌、今絶好調超!!!!な状態なの♪
「うん、ベースメイクはこれくらいにしておいて、後は現場に入ってからにしましょうね」
「はぁい♪」
ふふ、まだ全然完璧なわけでもないのに、ベースメイクを済ませただけで、ほんのちょっとだけど気分も上がっちゃうんだから、僕ってばほんと単純(笑)
ってゆーか、単純な上に能天気なの♪
ま、長瀬さん曰く、
「そうやって笑ってられるのも今のうちだがな…」
だそうだけどね?
分かってるよ。
僕だってちゃーんと分かってるもん。
こんな能天気にしてる僕だって、きっと現場に入ったら、絶対とんでもない緊張感に押し潰されちゃって、どうせ笑ってられなくなるだろうし…
でもさ、だからこそ今くらいは笑ってたいんだもん。
はぁ…、もぉ…
せっかく斗子さんに褒められて気分上々状態だったのにぃ…
台無しじゃんねぇ?
僕は斗子さんの腕に自分の腕を絡めると、ピトッと身体を寄せて、ついでに美人さんなのにちょっぴり逞しい肩に、頭をコツンと乗っけた。
ハードな撮影を乗り切るために、今のうちにしっかり充電しとかなきゃね♪