第24章 scene5:ツルテカな僕
「智、大丈…夫…?」
狭いバスタブの中で藻掻く僕を、和が両手を引っ張って助け出してくれようとする…んだけど、和ってそこまで力がある方じゃないし、多分また腰やっちゃってるから、
「いてててて、ごめん、無理だわ…」
呆気なく相葉さんとバトンタッチすることになり…
「ぷはぁ…、もぉ…、溺れ死ぬかと思ったよ…」
漸く救い出された僕は、バスタブのへりに手をかけ、乱れた息を整えた。
「ごめんごめん、ちょっと手が滑っちゃってさ…」
和が痛む腰を摩りながらその場にしゃがんで、濡れた僕の髪を掻き上げる。
ってゆーか、そのお顔は絶対心配してないでしょ?
寧ろ面白がってない?
僕は死ぬ思いだったのにさ…
まあ、こんな狭い所で溺れ死ぬことは、そう滅多にないだろうけど、それにしたって、だよね?
僕がぷぅーっとお顔を膨らませていると、相葉さんが何かを思いついたように両手をポンと叩いて、
「ねぇ、せっかくだからさ、三人で一緒に入っちゃわない?」
ただでさえ大きい声なのに、お風呂場という環境を利用した、更に大きな声で言った。
ってゆーか…、無理じゃない?
いくら僕のボロアパートと違って広いって言ったって、足を伸ばして入れるくらいのサイズってだけで、大人の…しかも男子が三人ともなると、絶対窮屈だもん。
なのに相葉さんたら…
「はいはい、詰めて詰めて?」
僕を押し退けて入って来るんだもん、本と強引なんだから…
「ほら、和も入って?」
「はあ? 無理でしょ…」
「大丈夫大丈夫、和コンパクトだし、入れるって」
そりゃそうかも知んないけど、いくらコンパクトだって一応“大人”だしさ、子供が三人で入るのとは訳が違うと思うんだけどな…
「あ、なんなら俺の膝に座る?」
「はあ? な、何恥ずかしいこと言ってんの? 馬鹿じゃないの?」
相葉さんのとんでもない提案に、いつも通りの憎まれ口を叩く和だけど、お顔…真っ赤だよ?