第24章 scene5:ツルテカな僕
「はい、これ…」
お会計を済ませ、スーパーを出ると、翔くんがスイーツでいっぱいの袋を差し出して来るから、僕はそれを受け取り、袋の中を覗き込んだ。
「こんなに沢山…、ありがとう」
「本当はさ、有名パティシエが作ったケーキとかプレゼント出来たら良いんだけど、こんなのでごめんね?」
「ううん、全然! HIME、とっても嬉しいよ♪」
本当だよ?
翔くんがくれた物なら、僕何でも嬉しいんだからね?
そりゃさ、有名パティシエは…ちょっぴり魅力的だけど、そーゆー問題じゃないの。
翔くんがくれた…ってことに意味があるんだから…
「じゃあ…、仕事頑張ってね?」
「え…?」
あ、そっか…
僕、咄嗟に“お仕事”だって嘘ついたんだっけ?
「HIME、スイーツ食べて頑張るね♡」
「うん(笑) DVD発売されるの楽しみにしてる」
そうだよね…
翔くんはバイトの特権まで最大限に利用するくらい、HIMEのDVDが発売されるのを楽しみにしてくれてるんだもんね?
でもごめんね?
きっと…ってゆーか、次が最後のDVDになっちゃうんだ。
翔くんの楽しみ奪っちゃうけど…ごめんね?
「じゃあ、また…ね? スイーツ、ありがとう…」
僕は翔くんにお礼を言ってから手を振ると、ちょっぴり名残惜しさを感じながらも、長瀬さんの待つ車に向かって走り出した。
途中、履き慣れない厚底サンダルで躓きそうになったけど、僕は一切翔くんを振り返ることなく、車の助手席に乗り込んだ。
だってさ、翔くんのお顔見ちゃったらさ、今度こそ離れたくなくなっちゃうんだもん…
でもさ、いくら僕が翔くんと一緒にいたいと思っても、お姉ちゃんとの約束を破るわけにもいかないしさ…
だいたい、僕が無理言って時間開けて貰ったんだから、余計にだよね?
それに撮影までの時間も、そんなにあるわけじゃないし、レンタルショップのバイトだってあるしさ…
ツルテカにするのは、今日しかないんだよね…