第24章 scene5:ツルテカな僕
「そっか、仕事か…」
本当は違うんだけどね?
でも言えないじゃない?
“これからNINOのお家に行って、お股の毛を剃って貰うの〜♪”
なんてさ、流石に言えないよ…
「残念だな…、もし時間あったらお茶にでも誘おうと思ったんだけど…、HIMEちゃんも忙しいもんね?」
「う、うん…」
行きたいよ?
本当は翔くんとお茶、行きたいよ?
でも“お姉ちゃん”と約束しちゃってるし、長瀬さんも待ってるし…
我慢するしかないよね?
「ごめんなさいね、また今度ご一緒しましょ?」
「そうだね。あ、じゃあさ、それ…」
「え?」
翔くんが、僕が押していたカートのカゴの中を指差す。
「俺に奢らせてくれない?」
「え、でも悪いわ…」
金額にしたらそうたいした額でもないけど、でも手土産に持って行く物を翔くんに買わせるなんて、やっぱり申し訳ないもの…
なのに翔くんたら…
「他には? 俺さ、今日丁度給料日だったんだよね。だから俺にプレゼントさせて?」
あ、そうか…
すっかり忘れてたけど、今日はレンタルショップのお給料が入る日だったっけ…
「あ、HIMEちゃんはプリンとか好き?」
「え、うん…」
「俺さ、プリン好きなんだよね(笑)」
うん、知ってるよ?
翔くんのことなら僕、ちゃんと知ってる。
「あ、これも…、後これもかな…」
翔くんがカゴの中に、プリンやらゼリーやらをポンポン放り込んで行く。
ってゆーか、翔くん…
そんなに僕食べらんない…ってゆーか、撮影前にそんなに沢山スイーツばっか食べたら、せっかく選んだ衣装が着られなくなっちゃうんだけど?
でも…
こんな風にカートを押しながらスーパーの中を歩いていると、まるで夫婦…は言い過ぎかもだけど、普通にカップルに見えちゃったりするのかしら?
「あ、荷物…、俺持とうか?」
「え、これ…?」
「うん、それ」
翔くんが不意に足を止め、肩にかけた紙袋を指差した。