第23章 scene5:“初”エステ♡
「さ、HIMEちゃん、こっちへ」
部屋の入口に立ち尽くす僕に、斗子さんが手を引き、ドレッサーの前へと促す。
「座って?」
言われて、フカフカのクッションがお尻に優しい椅子に腰を下ろす僕。
でも…
「あ、あの…、衣装合わせは…?」
部屋を見渡すと、それらしき物がいくつかラックにかけられているけど、斗子さんはそれを手に取ることもなく、ワゴンの上にメイクボックスを広げた。
「うわぁ、凄い!」
僕が持ってるのとは比べ物にならないくらいの種類と量に、僕の胸がワクワクする。
「HIMEちゃんはいつもメイクは自分で?」
「うん」
メイクさんがいたこともあったけど、それだって極たまーにのことだし、何より僕がHIMEだってことを知られたくはなかったから、スッピンで現場に入ることは殆どなかった。
「そう…、じゃあ撮影当日は私がお手伝いさせて貰おうかしら」
「え…、斗子さんが?」
「あのね、いつものHIMEちゃんのメイクでも全然良いと思うんだけど、今回は衣装も特別でしょ? だからメイクも特別にしないとね?」
斗子さんが鏡越しに僕に向かって微笑みかけるから、ついつい僕もつられて微笑み返してしまう。
ふふ、何だか斗子さんて姉ちゃんみたいだ。
もっとも、斗子さんみたく優しくはないけどね?
僕の姉ちゃんは、アニメに出てくるガキ大将みたいな人だからさ(笑)
「じゃあ、軽くメイクして行くから、ちょっとだけ目を瞑っていてくれる?」
「はい…」
言われるまま瞼を閉じた僕の顔に、クリームを纏った斗子さんの手が乗せられ、続けてリキッド状のファンデーションが顔全体に塗られ、アイメイク、チーク、リップと、順番に僕のお顔に塗られて行く。
いつも僕がしてることとそんなに変わりはないんだけど、誰かにしてもらうのって、とっても新鮮♪
なんてゆーかぁ…、初めて息子くんを誰かに触って貰った時みたいな感じ?
ふふ、それくらい斗子さんの手って気持ち良いの♡