第23章 scene5:“初”エステ♡
「さあ、出来たわ。目を開けて?」
言われて僕は瞼を持ち上げる。
いつもよりも瞼が重く感じるのは、きっとたっぷり塗られたマスカラのせいね?
「あまり濃くなり過ぎないようにしたんだけど、どうかしら?」
どうかしらって…、こんなの…
「なんか僕じゃないみたいで…」
すっごく変な感じなんだけど、でも…
「凄く良いかも♡」
「本当? HIMEちゃんにそう言って貰えると、私も嬉しいわ。あ、でも一応鬼軍曹の意見も聞いとく?」
お、鬼軍曹って…(笑)
間違ってないけどさ、なんなら僕だってずっと思ってたけどさ、恋人の斗子さんが言うから笑えちゃう(笑)
「あ、あとウイッグだけど、本番はアップスタイルにも出来るように、アレンジの効く物を用意するんだけど、今はとりあえずこれで…」
キュッと髪を纏めた僕の頭に、元々アップスタイルに形作られたウイッグが被せられ、斗子さんが鏡を見ながら微調整をする。
いつもは栗色のウイッグを使うことの多い僕だけど、黒髪ってあんまりないから、これまた新鮮かも♪
「うん、これで良いわね。それじゃ、お待ちかねの衣装合わせをしましょうね?」
「はい」
正直言うと、全然待ってはいなかった。
だってさ、当日に着るもんだとばっか思ってたから、前もって着ちゃうのは、楽しみが半減しちゃうのかな、って…
でもさ…
可動式のラックにかけられた衣装を目の当たりにしちゃうとさ、やっぱり興奮しちゃうわけで…
「え、ねぇ、この中から選んで良いの?」
「サイズはHIMEちゃんに合わせてあるから、どれでも好きなのを選んで?」
「え、え、え、本当に?」
僕はラックにかけられた衣装を手に取り、バスローブを纏ったままの身体に宛ててみる。
けど、ふと思ったんだ…
こんなに綺麗なのに、勿体無いって…
だって、チラッとしか見てないけど、あの絵コンテを見る限り、どんなに綺麗に着飾ってもさ、結局…