第22章 日常10:僕、決めた!
そう言えば、小さい頃は父ちゃんに似てるって言われるの、すっごく嫌だったな…
何が嫌だったのか、今となっては記憶もないんだけど…
でも一つ言えることは、僕がどんなに父ちゃんみたいな大人になりたいって願っても、僕には絶対叶えられないことが分かってたから…、だから父ちゃんに似てるって言われるのは、子供心に凄く苦痛だった。
「僕ね、もう気付いてるかもだけどね…」
「うん…」
「男の人が好きなんだ…」
「うん、知ってた…よ?」
そっか…、やっぱりそうだよね…
気付かないわけ…、ないよね?
「でもそれがどうかした?」
「翔くんはさ、気持ち悪いとか思わないの? その…ゲイとか、さ…」
「別に何とも思わないけど?」
そうだよね…?
そんな翔くんだからこそ、僕は好きになったんだし…
「でもね、父ちゃんは違ったんだ…」
「どう…違ったの?」
僕はアルバムのページを捲り、丁度中学校に上がる直前の、真新しい制服を着た僕の写真を指で差した。
「この頃だったかな…。凄く好きな子がいてね、僕全然おかしいこととは思わずに、当時仲の良かった友達に相談したんだ…」
一方的に、かもしんないけど、僕は親友だって思ってた。
だからまさかその親友に裏切られるなんて、全く予想もしてなかった。
「でもさ、次の日だったかな…、学校言ったらさ、黒板にも机にも“変態”とか…、酷いこと書かれててさ…」
今思えば、あの頃が僕の人生の中で一番辛い時間だったと思う。
「それで、僕が男の子がすきなことが学校中に知れ渡っちゃってね…」
「お父さんの耳にも入った…ってこと?」
「うん…」
当然だよね…、人の噂なんて凄い勢いで広まるから、結局当時中学生だった姉ちゃんまで、変態呼ばわりされちゃったから…
「父ちゃんね、多分ショック受けてたんだと思うんだ。だけどさ、僕には汚いものでも見る様な目に見えたってゆうか…」
凄く悲しい顔に見えたんだ。