第22章 日常10:僕、決めた!
店長からの伝言は、電話かメールで伝えれば良いや、って…そう思ってたのに、バイトを終えて店を出て、階段を降りた先に翔くんが立っていて…
「え、何で…?」
驚いたように言った僕に、翔くんは無言で手に下げていた紙袋を差し出して来た。
「これ、何?」
「お袋から…」
え、翔くんのお母さんから?
何で…?
「何か、うちのお袋がさ、智くんのこと気に入っちゃったみたいで…、クッキー焼いたから持ってけって煩くて…」
え、クッキー?
自他共に認めるスイーツ男子でもある僕は、やっぱり甘い物には目がなくて…
僕は袋の中に入っていた、色気もなーんもない(失礼か!)アルミホイルの包みをガサゴソと開いた。
すると…
「うわぁ、めっちゃ良い匂い♪」
途端に甘い匂いが広がって、その匂いを嗅いだだけで幸せな気分になる。
「ね、食べて良い?」
「良いけど…」
「やったぁ♪」
実は僕、お腹ペコペコだったんだよね…
だってさ、朝(…って言ってたもお昼近かったけど…)から、和と会ったり、事務所行ったりで、まともにご飯も食べらんなかったんだもん。
あ、ケーキは食べたけどね♪
だからバイト中も、ずーっとお腹グーグー鳴って大変だったんだ。
僕はチョコチップの入ったクッキーを一枚取り出すと、両手で持ってパクッとかじった。
「あはっ…、おいひぃ♡」
口の中にバターの香りと、ちょっぴり苦味のあるチョコの甘さが広がって、僕の満腹中枢を刺激する。
おかげで一枚食べただけじゃ物足りなくて、二枚目をペロリと食べてしまってから、僕はハッとする。
いけない…
次の撮影がいつか分かんないけどけど、憧れの衣装を着るためにダイエットするって決めたばかりなのに、こんな時間にこんな甘い物食べちゃったら…
しっかり身に付いちゃうじゃん!
しかもチョコ入りとか、絶対ダメなやつじゃん…
僕は三枚目に伸びそうになった手を止め、アルミホイルで残ったクッキーを綺麗に包んだ。
残りは明日のお楽しみだ♪