第22章 日常10:僕、決めた!
案の定、お店に着いた頃にはすっかり六時を過ぎていて…
僕は挨拶もそこそこにスタッフルームに駆け込むと、落ち着く間もなく支度をして、それからタイムカードを打って、俄に忙しさを増しつつあるレジカウンターに立った。
「ごめんな、急で…」
店長さんが僕の肩を叩くから、僕は頭を軽く下げて遅刻したことを詫びた。
でも店長さんは特に怒るでもなく、
「こっちこそ悪かったね、用があるって言ってたのに…」
大袈裟なくらいに首を横に振った。
確かに元々お休みの日だったし、用事があるとも伝えてはいたけどさ、遅刻は遅刻だもん、やっぱりちょっと申し訳ない。
「あ、そう言えば大野くんて櫻井くんと仲良かったよね?」
「まあ…」
「じゃあさ、連絡しといてくんないかな、櫻井くんが好きだって言ってた…」
まさかとは思うけど、
「HIME…ですか?」
出来ることなら違うって言って欲しいけど、
「ああ、そうそう。新作のDVDが入荷したから、真っ先に櫻井くんにって思ってね」
やっぱそうだよね…。
ってゆーか、従業員優先貸出なんてルールあったの、僕知らないけど?
「は、はあ…、じゃあ僕から櫻井くんに伝えておきますね?」
確か翔くんの次の出勤は来週だった筈だから、その前に連絡しとかなきゃだね。
「じゃあ頼んだよ」
店長さんはもう一度僕の肩を叩くと、積み上げられた大量の返却済みDVDをカゴに二つの突っ込み、カウンターから出て行った。
ふふ、店長さん力持ち(笑)
それにしても翔くんのHIME好きが、店長さんにまで浸透してるなんて…
僕、全然知らなかったよ。
ってゆーか、翔くん(HIMEの)DVDは(絶対)買う派だって言ってたのに、わざわざレンタルするなんて、やっぱり面白い人だよね(笑)
まあ、それだけHIMEのこと好きだってことなんだろうけどね?
だからこそ、僕がもしHIMEだって事を知った時の翔くんの気持ちを考えると…ね?