第22章 日常10:僕、決めた!
気になっていた問題が解決して、ちょっぴりホッとした僕は、向かいのビルに設置してあるデジタル時計を見てギョッとする。
「ねぇ、どうしよう…」
「何、どうしたの?」
「バイト…、行かなきゃなの忘れてたみたい…」
元々お休みだったところを、バイトの一人がお休みになったからって、急遽入ることになってたのを、すーっかり忘れてた。
「急げば間に合わない?」
「えと…、六時からだから、頑張ればギリ間に合うかもだけど、微妙かも…」
「とりあえずさ、またスケジュール決まったら教えて? それまでに私も練習しとくから」
「うん、じゃあ僕いくね?」
僕は電話を切ると、辺りをグルっと見回してから、道路に向かって右手を上げた。
すると、空車のランプを灯したタクシーが一台、まるで滑るようにさて僕の前に止まり、頼んでもない(失礼だな、おい!)のに勝手に後部座席のドアが開いた。
僕はタクシーの後部座席に乗り込むと、ドアが閉じると同時に運転手さんに行き先を告げた。
贅沢だとは思うけどさ、もしかしたら全力で走れば間に合うかもだけど、しょうがないよね?
僕ってのんびりしてるように見えるけど、実は遅刻とかさ、無責任なのって好きじゃないから…
それにね、いつもは長瀬さんのお迎えがあるから、滅多に出ることはないんだけど、社長さんから交通費も貰ったしね?
だからたまには良いかな、って♪
「あの、ちょっと急いで貰えますか?」
時間的に道が混んでる飲も分かるけど、少しでも早くお店に着きたくて、僕は運転手さんを急かした。
それでも目的地に到着するのは、多分時間ギリギリになるのは間違いなくて…
僕はスマホで店長さんに、ちょっと遅れるかもとメールを送ると、焦る気持ちを落ち着かせようと、ペットボトルのお茶をゴクゴクと喉を鳴らして飲んだ。
あんまり飲み過ぎちゃうと、お仕事中に何度もおトイレ行きたくなっちゃうから、あんまり沢山は飲みたくないんだけど仕方ないよね、だって喉カラカラなんだもん。