第22章 日常10:僕、決めた!
僕は社長さんの手から、まるでひったくるみたくして資料を引き取ると、今度は適当じゃなくて、それこそプロットから絵コンテに至るまで、しっかりと…隈無く目を通した。
結果…
後悔しないって言ったけどさ…
後悔しないって言ったのは、他でもない僕だけどさ…
前言撤回!
…って言っちゃいたい気分になる。
だってさ、だってさ、衣装のことばっかに目が行ってて、他の細かいトコまで見てなかったけどさ、これはちょっと…
なんてゆーのかな…、多分このシチュエーション?は、僕史上“初”ってゆーか…
かなり過酷な撮影になることは間違いなくて…
「おい、顔、蒼くなってるぞ?」
長瀬さんが僕の顔を覗き込むけど、返事をすることすらままならず…
僕はひたすらお魚さんのように口をパクパクさせた。
「どうする? 変えるなら今だぞ?」
そうだよぬ、そうだよね?
今しかないよね?
でもな…、ずっと僕が憧れ続けた衣装着れるし(あくまで衣装優先な僕♪)、それに一度は後悔しないって言っちゃったし…
ここで意志を変えたりしたら、さんざん悩んで悩んで悩み抜いて、漸く決めた僕の覚悟が揺らいでしまうような気がする。
だから僕はもう迷わないよ?
「それで大丈夫…です」
「本気か?」
「うん、本気だよ?」
HIMEに二言はないもん!
「分かった。じゃあこの企画で話を進めておく」
「はい、お願い…します…」
「あああと、分かってると思うが、身体のメンテナンスはしっかりしとけよ?」
「はい…、ってゆーか、本当に剃らなきゃダメ?」
僕が言うと、長瀬さんは何のことだと言わんばかりに、無精髭の生えた顎を手でスリスリと撫でた。
「だから、アソコの毛…、剃らなきゃダメなの?」
※「アソコ」とはつまり「お股」の毛ね。
「ああ、だろうな…、パイパン必須って書いてあるしな」
そうだよね…
ハッキリくっきり赤い文字で書いてあるもんね…
自分で決めた事とはいえ、赤ちゃんみたくなっちゃうのは、ちょっぴり嫌かも…