第22章 日常10:僕、決めた!
「どうしてもこの中から選ばなきゃダメ…ですか?」
ダメもとで聞いてみるけど、ニッコリ笑顔で返して来るから、僕はガックリと肩を落とすしかなくて…
それでも、いくつかある資料の中から何とか一つを選ぶと、それを長瀬さんに差し出した。
資料を受け取った長瀬さんは、パラパラッと資料を捲って目を通してから、
「本当に良いんだな?」
と僕に確認をする。
でもさ、もし僕が“嫌だ”って言ったら、僕辞めさせて貰えないんでしょ?
だったらさ、こんな薄っぺらなお腹だけどさ、括るしかないじゃん?
「これまでと比べると、かなりハードな内容になるが、本当に良いんだな?」
もぉ…、そんな何回も確認しないでよ…
「うん…、それで本当に辞めさせて貰えるなら…」
それに、しっかり目を通したわけじゃないけど、衣装がね…前から一度は着てみたいと思ってた物だったから…
「Youの決心は硬いのね?」
もぉ…、社長さんまで…
「はい」
「僕はYouのことが特別気に入ってたから、手放すのは本当に惜しいんだけど、Youが決めたことなら、残念だけど仕方ないね?」
社長さんが僕を可愛がってくれてたのは、僕も知ってた。
僕がちょっとでも痩せたりすると、ちゃんとご飯食べなさいって、ご飯に連れて行ってくれたり、撮影に使う衣装だって一緒に選んでくれたりしてさ…、お父さんみたいにして貰ったから。
だから社長さんに寂しい思いをさせたくはないけど、でも仕方ないじゃん?
僕には何よりも大切だって思える存在が出来てしまったんだから…
もっとも、僕がお仕事を辞めたからって、この先どうなるかなんて、どこにも保証はないんだけどね?
それでも一歩を踏み出すためには、この決断は必要なことだから…
「本当に後悔しない?」
「はい、もう決めたことだから…」
「そう? でもこの企画書…チラッと見ただけだけど、You絶対泣くよ?」
え、そ、そ、そ、そんなに…?