第21章 日常9:耳を塞げば…
「帰ろうぜ?」
「うん…」
翔くんの腕が僕の肩に回される。
ってゆーか、前はそんなことしなかったよね?
そりゃさ、手を繋いだこともあるけどさ、あれは追っかけてくるニキビくんから脱げるためだったし…
なんか…、和ん家にお泊まりしてから、やたらスキンシップ増えてない?
今朝だって…
「あーあ、口の周りマヨネーズだらけになってっぞ?」
なんて言いながら、僕の口の周り指で拭ったかと思うと、その指ペロンとしちゃうしさ、それから相葉さんの車に乗る時だって…
ドアは開けてくれちゃうし、シートベルトまでしてくれちゃうしさ、こう言っちゃなんだけど…
気味が悪いくらい優し過ぎて、僕ちょっぴり怖いよ?
「あ、智は今日何時からだっけ、バイト」
「僕はいつもと同じ、六時からだよ?」
「そっか…、じゃあさ、それまで俺ん家来ない?」
え?
「別に深い意味はないんだけど、お袋がさ、智くんに会ってみたいって言うからさ…」
翔くんのお母さんが…?
僕に…?
「え、な、なんで?」
翔くんは深い意味は無いって言うけど、会ってみたいっていうからにはそれなりの理由がある筈じゃん?
「無理なら別の日にでもするけど、どうする?」
全然無理じゃない。
バイト時間までまだ余裕はあるし、その間ずっと翔くんと一緒にいられるなら、そんなに嬉しいことはない。
けどいきなりお母さんとか…、僕緊張しちゃうよ。
「良いけど…、僕こんな格好だし…」
初めて翔くんのお母さんに会うのに、こんなヨレヨレのTシャツとハーフパンツとかさ、失礼じゃない?
せめてお着替えくらいしてった方が良くない?
「気にしなくて良いよ」
「そ…う…?」
でもなあ…、翔くんのお母さんだよ?
お仕事の関係で良く海外にも行ってるって聞くし、僕的にはバリバリにお仕事が出来るキャリアウーマンみたいな?ちょっぴりキツめなイメージしかないんだよね…
はあ…
良いよとは言ったものの、何だか気が重いよ…