第21章 日常9:耳を塞げば…
友達だからって…
だから手伝ってやるって…
そう言ってくれるのは、正直嬉しい。
翔くんが同性の身体に触れることに対して、不快感だったり、抵抗だったりがないって証拠だからね?
僕だってそう…
男の人に触られることは全然嫌じゃない。
もし触れられることに嫌悪感を抱くんだったら、AV女優(男優)なんてお仕事、とても出来ないからね?
でもさ、そうじゃないんだよ。
僕は“お友達”としての翔くんじゃなくて、“恋人”としての翔くんに触って貰いたいの。
だって寂し過ぎるじゃん…
友達だからヌクの手伝って、なんてさ…こんな僕でも流石に惨めになっちゃうよ。
「俺に触られるの…、そんなに嫌?」
え…?
なんで…?
「なんつーかさ、全力で拒否ってるじゃん? そんなに俺に触られるの嫌なのかな…って…」
「ち、違っ…」
なんでそんな風に思うの?
「そうじゃなくて…、ただ…」
「ただ…、なに?」
「恋人でもないのに、そうゆーことするのは、僕は違うかなって…」
もし僕達が“友達”ではなく、“恋人”と呼べる関係だったとしたら…、僕は翔くんの申し出を喜んで受け入れたと思う。
ってゆーか、無条件に触って貰ってたと思うし、それ以上のことだって当然…
でも僕はまだ、翔くんに何人のお友達がいるかは知んないけど、そのうちの“一人”でしかないんだもん。
僕にとって翔くんは“特別な存在”だけど、翔くんにとっての僕はそうじゃないから…
「ふーん…、なんか良く分かんねぇけど、もし俺が恋人だったら…」
え…?
何…言ってるの?
「俺が、智くんの恋人だったら、触っても大丈夫…ってこと?」
「う、うん…、でも無理でしょ?」
だって、根っからゲイの僕と違って、多分ノンケだから…
HIMEのことが好きだからって、それは翔くんがゲイである証明にはならないから。
ただ見ているだけと、実際に触れるのとでは、全然違うんだよ?