第21章 日常9:耳を塞げば…
誤魔化さなきゃって…
違う(全然違わないけど…)んだって…
必死だった。
でもさ、気持ちが焦れば焦るほど、上手い言い訳なんて出て来なくて…
「えと…、これはなんてゆーか…、その…」
結局しどろもどろになって、赤くなった顔を背けることしか出来ない僕。
だって、お股を隠そうにも手は掴まれてるし、息子くんは翔くんの太腿をツンツンしてるしさ、それ以外にどうしようも出来ないんだもん。
すっごく恥ずかしかった。
初めてカメラの前でオナニーした時の数倍…ううん、数十倍…数百倍恥ずかしかった。
「あの…さ、誤解して欲しくないんだけどさ…」
掴んでいた僕の手を解放して、ゴロンと仰向けになった翔くんが、片腕を枕に横目で僕を見た。
「な、なに…?」
「智くんてさ、経験少なそうじゃん?」
へ…?
神妙なお顔で突然何を言い出すかと思ったら、僕の経験値の話?
「け、経験…って…?」
「アイツ…ほら、ニキビ野郎に襲われかけた時にも思ったんだけどさ、智くんてすぐ感じちゃうみたいだし、絶対自分でシタりしないんだろうな、って…思ってさ…」
は、はあ…?
ってゆーか、僕…けっこう経験豊富な方なんですけど?
なんたって週に一回はセックスしてるし、オナニーだって求められればするし…
勿論、毎回相手も違うし、気持ち良いセックスばっかではないけどね?
だから経験値としては、同年代の男子に比べたら割と高めな方だとは思う。
ただそれはあくまでお仕事の話で、プライベートで触ることは…殆どないかも。
「そ、それがどうかした…?」
「だからさ、手伝ってやろうかと思って…」
へ…?
「な、な、な、何…を…?」
聞かなくたって分かってるよ?
分かってるけどさ、聞き返さずにいられないじゃん?
僕お得意の“早とちり”ってやつかもしんないからさ…
ってゆーか、そうであって欲しいって…、僕の早とちりなんだって…、思いたかったのにな…