第3章 scene1:屋上
ズンと重い腰を摩りながら、階段を一段上がる度にヒラヒラするスカートをこっそり抑える。
女子って、ホント大変。
足はスースーするし、こんなに短くっちゃ下からパンツ丸見えだし…
この仕事をするまでは考えたこともなかったけど、けっこう苦労してるんだね?
それにしても屋上までが遠い。
いい加減膝が大笑いを始めそうなんだけど…
階段の踊り場で足を止め、目の前に続く階段を見上げる。
「屋上ってまだなの?」
「いや、もうすぐそこだ。つか、お前体力無さ過ぎだろ…」
手摺に凭れかかって息を整える俺の目の前を、僕のメイクボックスとリュックを抱えた長瀬さんが、息一つ乱すことなく通り過ぎて行く。
って言うかさ、僕のこと体力無いって言うけどさ、仕方なくない?
僕、さっきまで相葉さんに突き上げられて、喘ぎまくってたんだよ?
疲れるに決まってるじゃん…
「…って言っても仕方ないか…」
僕は“よし!”とばかりに気合いを入れると、長瀬さんを追い越す勢いで階段を駆け上がった。
そしてその先にあった“いかにも”な鉄のドアを押し開くと、海風…だろうか、ほんのり潮の香りを含んだ風がスカートを捲り上げた。
「寒っ…」
僕は思わず肩にかけたブランケットをキュッと胸元で引き寄せた。
ただでさえ凍えそうな寒さの中、裸にならなきゃいけないかと思うと、正直逃げ出したくなる。
でもそんなことも言ってられないから、引き攣る顔に無理矢理笑顔を浮かべ、監督さんと打ち合わせだろうか…、カメラを間に会話をするカメラマンさんの元へと駆け寄った。
「お久しぶりです♪」
今日のカメラマンさんは、以前にも何度かお仕事したことのある人だから、変に気を使わなくても済むから楽だ。
「お、HIMEちゃん今日も可愛いね」
「ふふ、ありがとうございます♪ 今日も可愛くお願いしますね♡」
僕が笑顔を向けると、カメラマンさんは元々緩んだ頬を更に緩ませ、「任せとけ」と自分の胸を叩いた。