第19章 scene4:宴会場
坂本監督から一通りの説明を受けた僕達は、坂本監督に指示されるまま所定の位置に着いた。
お布団の上に、若干の距離を空けて座った僕達は、お互いに右手を出し合って握手をする。
NINOの手には、マイクに見立てた電マくんが握られていて、何でもない時ならプッと噴き出してしまうところだけど、今はそれどころじゃない。
だって、僕はこういう現場は経験ないから分かんないけど、だいたいがお決まりの質問ばっかだし、それにある程度の質問は最初っから決められてるだろうから、質問を受ける側だって毎回同じような答えを言えば済むんだろうけど、サプライズ好き(←勝手な印象だけど…)な坂本監督にの作品な上に、NINOが…ってなると、嫌でも緊張しちゃうじゃん…
僕はソワソワする気持ちを落ち着かそうと、静かに瞼を閉じ、坂本監督の”スタート”の声がかかるのを待った。
汗ばみそうに熱い照明が僕に向けられ、音撮り用のマイクの気配を感じたその時…
NINOが”コホン”と小さく咳払いをして、坂本監督が指をパチンと鳴らした。
僕は深く吸い込んだ息を吐き出し、閉じていた瞼を静かに開いた。
僕はHIME…
可愛くって、ちょっぴりエロくて、誰からも愛される“男の娘”アイドルのHIME…
僕はいつもしているように、自分に魔法をかけた。
すると、僕の“HIMEスイッチ”が入ったのを、僕の様子から感じとったNINOが、スっと息を吸ってから、マイクに見立てた電マくんを口元に寄せた。
「HIMEちゃんこんばんは」
「ふふ、こんばんはぁ♪」
僕は広げた両手を顔の横で振り、カメラに向かって笑いかける。
「くくく、相変わらず可愛いわね」
「そうですかぁ? HIME、嬉しいです♡」
「じゃあ、今日はHIMEちゃんのこと、色々聞かせてくれる?」
「勿論です〜♪ HIME、ドキドキしちゃう♡」
ホントだよ?
ホンっトーに、僕の心臓、ぶっ壊れちゃうくらい、ドキドキしてんだからね?